中国で「日本車が総崩れ」不安視される撤退ドミノ 20年前後から外資と現地の合弁企業淘汰始まる

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対象となったのは派遣従業員で、当初の期間満了前に契約解除となったわけだが、SNSで流れている条件提示資料によると、経済補償金、感謝金、ボーナスなどを合わせて月給の約6カ月分に相当する金銭を受け取れる。

広汽トヨタは派遣先と協力して再就職の支援も行っており、中国では「良心のある会社」「余裕がある」と受け止められている。

広汽三菱は生産再開断念

同じ人員整理でも、追い込まれ感が漂うのが広汽三菱だ。7月中旬の従業員に充てた書面では「自動車市場はガソリン車から新エネルギー車へのシフトが急速に進んでいる」「当社の車種は、販売が当初予想に届かず経営が苦境に陥っている」と現状を説明したうえで、「人員の最適化は避けられない」とリストラの方針を示した。

2012年に広汽集団、三菱自動車、三菱商事の3社が設立した広汽三菱はアウトランダーやASXを生産し、2017~2019年の販売台数は年間11万~14万台に達した。それが2020年に7万5000台と10万台割れし、2022年には3万3600台まで減少。コロナ禍による需要縮小と、テスラの上海工場稼働をきっかけにしたEVブームのあおりを受けた。

中国での報道によると、広汽集団は2022年9月、広汽三菱の経営改善のために10億元(約190億円)を援助した。それも焼け石に水で、2023年1~3月の同社の販売台数は前年同期比58%減の3969台まで落ち込んだ。年間の生産能力20万台に対し、あまりに寂しい数字だ。4月以降、広汽集団の生産販売速報からは「広汽三菱」の名が消え、「その他」に分類されている。

同社は3月から長沙工場(湖南省)の新車生産を一時停止、SNSアカウントはいずれも今年2~4月に更新がストップしており、中国撤退の噂が断続的に流れるようになった。

三菱自は「6月の生産再開を目指す」と撤退報道を否定し、6月には広汽三菱が広汽集団、三菱自動車などから最大で18億8400万元(約370億円)の融資を受けることが発表された。しかし現行車種で不振を打破する見通しが立たず、ついに人員整理に手を付けることになった。

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