民主党政権の医療政策 二木 立 著~現政権の医療政策を批判的に分析
本書は民主党政権の医療政策を論評したもので、類書はない。著者は世の中が医療問題にまったく無関心だった1994年に『「世界一」の医療費抑制政策を見直す時期』を著して以来、わが国医療で保険財源過少がもたらす弊害(患者の窓口負担の重さや医師不足)について警鐘を鳴らし続けてきた。国民皆保険制度堅持のスタンスに立ち、小泉政権下での混合診療拡大などの動きを厳しく批判。近年は必要医師数や財源問題など医療政策の中心テーマについて著書で詳述してきた。今回の著作は“医療政策批評シリーズ第3弾”に当たる。
はしがきで民主党政権への「政権交代そのものの歴史的意義は高く評価している」としつつも、「民主党政権が実施した医療政策で評価すべき点はまったく思いつきません」と「落第点」をつける。中央社会保険医療協議会(中医協)委員から医師会代表を排除したことなど「手続き民主主義を無視した乱暴な『政治主導』」や「小泉政権時代に政治的・政策的に決着した混合診療原則解禁論等が蒸し返されたこと」を二つの「マイナスの評価をすべきこと」の代表例として挙げている。
本書では民主党政権の医療政策に独自性は乏しく、2009年総選挙で民主党が掲げたマニフェストでは「自民党との医療政策の違いは意外に小さい」と指摘。むしろ菅政権の「新成長戦略」(10年6月閣議決定)に盛り込まれた「医療改革の大半(混合診療の拡大、医療ツーリズム、健康関連サービス)が医療分野への市場原理導入の呼び水になる危険が大きい」と述べている。
そのうえで、医療ツーリズムや混合診療拡大などの可能性について分析。国民や医療界の支持は得られず、「ともにごく限定的」にとどまるとしている。
にき・りゅう
日本福祉大学副学長、教授。1947年生まれ。東京医科歯科大学卒業。代々木病院リハビリテーション科科長、病棟医療部長、理事などを経て現職。近著に『医療改革--危機から希望へ』『医療改革と財源選択』。
勁草書房 2520円 195ページ
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら