台湾流・半導体人材育成術「半導体学部」のすごみ 明新科技大学、日本が学ぶべき産官学連携

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台湾北部・新竹市にある明新科技大学半導体学部(学院)と学部長の呂明峰教授(写真・福田恵介)

世界最大の半導体ファウンドリー・TSMC(台湾積体電路製造)が熊本県に進出を決めて以来、日本では台湾の科学技術力への関心がやまない。熊本県では工場建設が進行中だ。ただ、深刻な問題が浮上している。それは日本国内で半導体関連の人材が足りないということだ。

現在、TSMCをはじめ進出・関連企業がこぞって工場稼働に向けて大々的に人材募集を行っているが、「初任給30万円」という地元では高額な条件を提示しても十分に人材は集まっていない。

募集条件も、企業が「英語と中国語ができる人」という条件を当初掲げていてもまったく集まらず、「英語ができる人」でもめがねにかなう人材が来ない。さらには「台湾の大学留学経験者なら、理系文系問わず声をかけられている」という話さえ聞こえてくる。

サイエンスパークのお膝元

では、TSMCのお膝元、台湾では半導体の専門人材をどう育成しているのか。その1つの例として、「台湾初の半導体学部」と銘打ち学生を募集、業界に人材を送り出している大学がある。台湾北部・新竹市の「新竹サイエンスパーク」にほど近い、明新科技大学がそこだ。

明新科技大学は1966年に理工系の専科学校として創立、現在は約1万1000人の学生が学ぶ。半導体学部(半導体学院)が設立されたのは2021年。それまでも工学系学部には半導体関連の課程があったが、半導体学部の設立に伴い、それらを集約した。

「5年ほど前に、特色のある学部をつくる構想が出た時に、大学の所在地にある産業に合わせた学部をつくろうというアイデアが出た」と、明新科技大学半導体学部長の呂明峰教授は言う。すぐ近くに新竹サイエンスパークがあり、ここは進出企業の半分を日本企業が占めている。また台湾国内には新竹に加え桃園、苗栗と3つのサイエンスパークがあるが、新竹には半導体産業で世界トップ10に入る企業が集まっている。

「さまざまな条件が整っており、半導体に近づける学部をつくることを決めた」(呂教授)。台湾政府から2022年度までに総額5000万台湾ドル(約2億2300万円)の補助金もあり、半導体学部は設立された。

明新科技大学ではとくに、半導体の製造工程で「後工程」と呼ばれる、組み立てや試験・検査の工程でのスペシャリスト育成に特化している。学部内には半導体検査機器をはじめ、企業が実際に製造工程に必要として設置している機械と同じものがずらりと用意されている。

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