タワマンの「学歴成金」家族を狙う私立中学の実態 中学受験×タワマン文学対談<後編>

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窓際:新興校は、タワマンに住んでいる親が好きそうなSTEAM教育だったりグローバル教育だったりを強烈にアピールするんですよね。

私は昼はサラリーマンをやっていて、兼業で作家をしているのですが、東京出身ではないサラリーマンの立場から見ると、たしかにこれは刺さるなと思うんですよ。これだけこなしておけば、上級サラリーマンみたいになれそうだなと思ってしまう。

例えばおおたさんが1冊の本にまとめられた練馬の私学の教育には、たしかに美学がありますよね。学校の中で泥にまみれてヤギを育てて、一浪して東大に行くという。

一方で、「うちに入れてくれればこういう人材に育てますよ」と言ってくれる新興校がある。ある意味インスタントラーメンみたいでみみっちいなとも思うんですけど、いわゆるコスパ・タイパ的な感覚では、後者に惹かれちゃうわけです。

おおた:STEAM教育やグローバル教育をすれば、“STEAMなひと”“グローバルなひと”になると信じるのもずいぶんとナイーブだと思いますけれど……。

窓際:一定以上の大学を出て、英語ができて、いい会社に入れれば、これくらいもらえるっていうのがすべて可視化されているなかで、成功への近道を選びたくなってしまう。サラリーマンの視点からは、それが正解に見えてしまうんです。国際系新興校はそこをうまく突いているなと思います。

競争に勝つ教育よりもより良い社会を築く教育

おおた:予想不可能な形で世の中が変化するとこれだけいわれているのに、それでもなお現時点でのサラリーマンの視点から見える成功への最短距離を進ませようとしてしまうのはなぜなのか、私にはすごく不思議で。

だって、近道だと思ってた道が、急に世の中が変わって、行き止まりになってしまうかもしれないんですよね。だったら損得勘定なんてしないで好きな道を進めばいいじゃないですか。

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窓際:不確実な時代だからこそ目の前の確かなものをつかんでしまうんです。それが歪んだ形で出てしまうのが、マネジメントしてしまうお父さんだったりするんだろうなと。

おおた:親として、それが子どものためなのだと思ってやる。でも、『勇者たちの中学受験』でも描いたことですが、その気持ちの発端は、親の不安ですよね。

窓際:それはあると思いますね。

おおた:不安を原動力にしちゃうから、暴走も起こりやすい。STEAM教育やグローバル教育と銘打つものがタワマンの住民には刺さりやすいということですが、一方で、奇しくも窓際さんが今回の作品で書かれているテーマに、強烈なジェンダー・ギャップやジェンダー・バイアスがありますよね。

目の前の社会をちゃんと見たときに、本当の意味で優先順位が高い教育は、STEAM教育よりもグローバル教育よりも、ジェンダー教育なんじゃないの?って思ってるんです。そこが日本社会の最大の弱点だと思うからです。なんでそこをアピールする学校が増えないんだろうって思って、いま、まずは男子校のジェンダー教育について取材を進めているところです。

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