エネルギー政策をめぐりドイツで続く激しい攻防 現地ジャーナリストレポート
議会のタスクフォースの中には、原子力の使用継続推進を支持する有力議員もいる。キリスト教民主同盟のヘルマン・グローエ氏は、再生可能なエネルギーへの転換は「経済的に採算が合う」ように実施されねばならない、と言明した。また、自由民主党のクリスチァン・W・リンドナー幹事長は、社会民主党と緑の党が当初計画したように2022年までに原子力を廃止するのは非現実的だ、と述べた。
政府の政策転換に最も強く異議を唱えているのは、電力会社RWEだ。同社の原発ビブリスAを直ちに停止するという決定について、RWEはすでに法的手続きに着手した。法律専門家によると、最も古くてしかも完全に償却を終えた原子炉をもさらに8年間使用延長するという拘束力を持った法律を昨年に発議したばかりの政府が、今になって政策を転換するという行動には、いかなる法的根拠もない。
RWEのユルゲン・グロスマン社長は、日本の原子力発電所で事故が発生したあとでさえ、原子力の使用に関する自分の見解には原則的に変化はないと述べた。「実際に何が起こったのかを問うことが必要なのであり、膨大な事実、映像、情報の中から私にとって不利なものだけを選び出すやり方は誤りだ。」
会社による法的措置が進行しつつある一方で、グロスマン社長は、常に自社株主の利益に配慮しなければならないという道理に基づき、さまざまな政治的要求、批判、密かな脅しを手段に使って、政府の処置に反対している。それと同時に、電力会社4社は申し合わせて再生エネルギー推進基金(Fund for the Promotion of Renewable Energies)(Oeko-Fonds)へ出資する義務の履行を当面停止している。4社は本来、今年度および来年度、それぞれ3億ユーロを支払うことになっていた。
グロスマン社長の主張は、政府と電力業界との間で現在、水面下において熾烈な争いが進行していることを、雄弁に物語っている。そこで、メルケル首相にとっては、政治的信頼を取り戻し、また、エネルギー政策の転換はバーデン・ビュルテンベルク州での選挙をにらんだ単なるプロパガンダ戦術ではないということを国民・有権者に納得させることが、非常に重要な課題となっている。
グロスマン社長は懸命に、自分の会社は包括的な電力会社であり、原子力はその活動の一部にすぎないと説明しようと努めている。今後数週間は、委員会「Ethikkommission」の意思決定プロセスに影響を与えようとする電力会社のロビー活動・広報活動努力が高まりを見せるものと予想される。
■東京電力のデータに依存する日本政府に批判
しかし、これまで一致団結してきたエネルギー関連企業の統一が崩れつつある兆しも見える。ドイツのエネルギー・水道業界団体の理事会は、4月8日にベルリンで開催したエネルギーに関する会合において、原子炉を2020年までに、遅くとも2023年までに廃止することに強く反対するメンバー企業E.ONおよびRWEの主張を否決した。