エネルギー政策をめぐりドイツで続く激しい攻防 現地ジャーナリストレポート

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■東電の未熟な対応を憂慮

生物学的安全問題研究所(Institute for Research of Biological Safety-Issues)(ハレ市)のアレクサンダー・S・ケクレ所長は、日本政府および原子力安全・保安院が東京電力から提供されるデータに漫然と依存していることを批判する。「東京電力が信頼できないことはすでに十分に証明されている。原子炉の状況について発表される事実はみじめなほどに不十分なものだが、正直に言って、私は、その不十分さよりも、東京電力の未熟な対応のほうをもっと憂慮している」。

官僚機構の驚くべき「漫然とした依存性」は、経済産業省原子力安全・保安院の西山英彦審議官の4月9日の発言の中に典型的に現れている。西山審議官はこう述べた。「絶対大丈夫と信じていたが、こういう事態になった。絶対安全を目指さないといけない時代が来たと思う」。

エネルギー会社にもし広範囲に及ぶ政治的影響力、長年にわたる財界および官僚機構との密接な関係がなかったならば、上記のような発言(知性を備えた政府高官がこのような発言をするとは、ドイツで考えられない)は、底深い不誠実さの現れだと批判されたに違いない。

(Andreas Gandow●1950年生まれ。85年から2002年までドイツの経済金融新聞ハンデルスブラットの東京支局長。現在ベルリン在住)

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