エネルギー政策をめぐりドイツで続く激しい攻防 現地ジャーナリストレポート


 3月22日には、原子力問題を包括的に改めて検討する賢人グループを任命。「電力供給確保の倫理的側面に関する委員会」(Commission on Ethical Aspects of a Secure Power Supply)のクラウス・トファー委員長(CDUの党員、環境大臣を務めた経験がある)は、「大きな経済的・社会的混乱を来すことなく、原子力に頼らない未来に向かって進むことができる効率的な経済・社会の実現可能性を立証できる、また立証していこうとすることが重要だ」と言明した。

■州選挙で勝利、反原発の緑の党への支持拡大

このように政治主導によって広報活動がなされたにもかかわらず、ライナー・ブリューデルレ経済・技術相がドイツの財界代表たちとの非公開の会合で述べた内容がリークされたことによって、その効果は大きく損なわれた。大臣はその会合で、発表されたモラトリアムは合理的な考察に基づくものではなく、3月27日に予定されている選挙向けの戦術にすぎない、と述べたのだった。

輸出産業の中心地で政治的に重要度の高いバーデン・ヴュルテンベルク州では、この州をほぼ60年間にわたって統治してきたCDUが3月の選挙で大敗を喫した。ドイツの歴史が始まって以来はじめて、緑の党の政治家(ウィンフリート・クレッチマン氏)が政権を担う州政府が誕生することになる。選挙の結果、緑の党は得票率を倍以上に伸ばし社会民主党(SPD)をも上回った。選挙への関心が非常に高まり、州の現政府の政策に反対票が投じられたことが読み取れる。現政府は最近まで、原子力を強力に推進してきた。

最近の世論調査は、全国レベルにおいても、緑の党が大きく支持を拡大するという大変動を示唆している。緑の党は、何年も前から原子力使用反対を主張し続けている。

フォルサ研究所が4月の第1週に行った世論調査によると、回答者の28%が緑の党に投票すると回答した。この割合だと、緑の党と社会民主党(23%)とが新たに連立を組めば過半数を制することになるが、その場合、連立の主導権は緑の党が握ることになる。この世論調査では、CDUと規模の小さい自由民主党(FDP)との連立政権である現政権を支持すると答えたのは、回答者の3分の1にすぎなかった。この結果について、フォルサ研究所のマンフレッド・ゲルナー所長は、「一般の人々は、メルケル首相が率いる現政権がエネルギー政策を本気で変更するとは確信していない」とコメントした。

回答者の原子力使用に関する見方も大きく変化した。回答者の71%は、原子力は少な
くとも今のところは不可欠だと考えているが、その割合は2010年と比べると10ポイント低下している。しかし同時に、回答者の63%が、すべての原子力発電所を即時に、または少なくとも5年以内に運転停止してほしい、と考えている。原子力発電は無期限に使用すべきだ、と考える人は17%にすぎない。大多数は、程度の差こそあれ原子力の潜在的な危険性を不安視していて、原子力発電に頼らずに電力を賄うために一月当たり20ユーロまでなら電気料金の上昇も甘受すると回答している。

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