面白いコントラストとなっているのが、フォルムはFRセダンとしてまさに正統派の仕立てとされていることだ。フロントオーバーハングは短く、ボンネットは長くて、キャビンは後方に寄せられている。テールはやや垂れ下がり、全体にエレガントな印象を漂わせている。
先鋭的なキャビンフォワードのEQEとは真逆を行くオーセンティックさは、敢えて狙ったものだろう。今はまだ内燃エンジンを積むセダンを求める人は、こういうものを求めているはず。とは言え、単に懐古趣味とはしないで、ディテールに新鮮味をプラスすることで、まさに時代の橋渡しをする。そんなデザインと言えそうだ。
こうして見て、そして触れるだけでも想像以上の気合の入り方に溜息が出た新型Eクラスは、乗ってもやはりスゴかった。あらゆる性能が、誰でもすぐに実感できるくらい格段に向上していたのである。
ボディの剛性感、堅牢感、静粛性ともきわめて高い
プラットフォームの刷新もあってボディの剛性感、堅牢感は半端なく、静粛性もきわめて高い。パワートレインはMHEVでもPHEVでも4気筒エンジンとの組み合わせが主体となるが、エンジンはまるで自分から遠く離れたところにカプセル化されて積まれているかのようで、騒音や振動をまるで意識させることがない。
新開発のAIRMATICエアサスペンションと、ADS+と呼ばれる減衰力連続可変式ダンピングシステムの組み合わせは、当たりが実に柔らかく、あらゆる入力をするりといなしてしまう極上のライドコンフォートをもたらす。それでいて身のこなしに軽快さすら感じられたのは、後輪を最大4.5°まで操舵するリアアクスルステアリングのおかげだろう。
試乗を前に、現行モデルを踏まえて考えていたのは、「なんで、これほど良くできたクルマを、改良ではなく全面刷新しなければならないんだろう」ということだった。そのぐらい先代モデルは完成度が高かった……はずなのだが、それなのに、いやそれだからこそ、試乗しての驚きは大きかった。その跳躍ぶりは、これまで体験したことがないほどのものだったのである。
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