「お金の起源は物々交換」信じる人が知らぬ大欠陥 もっともらしい説だが「歴史的事実はない」

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クレジットカードは最近の発明だから、先におカネがあって後からクレジット、つまり信用システムができたと思っていた人もいるかもしれません。しかし実はおカネより先に信用取引があり、おカネがなくても人びとは借用証書を使って支払いをしていたわけです。

これを否定する史料は見つかっていないので、おカネの起源は物々交換ではなく、貸し借りだったと考えられるのです。

また、近年はキャッシュレスの時代と言われ、クレジットカード以外にも、「○○ペイ」といった貨幣を用いない支払い方法が次々と生まれています。しかし、人間は5000年以上も前から、すでに貨幣以外の支払い手段を持っていたのです。

重要なのは信頼関係

おカネの起源は「物々交換」ではなく、「貸し借り」だった。この歴史的事実は、いみじくもおカネというものの本質を表しています。

物々交換は、AさんとBさんの「○○が必要だ」「○○が欲しい」という欲求、「ニーズ&ウォンツ」からスタートします。それぞれの欲求がうまくマッチングすれば、物々交換が成立します。

一方、「貸し借り」は違います。「○○を借りたい」というAさんに対して、「じゃあ貸してあげよう」とBさん。何かの用立てを具体的に頼むとき、「困っているなら助けてあげよう」と手を差し伸べる相手がいるから、「IOU」が成り立つ。そこが個人の「ニーズ&ウォンツ」で成り立つ物々交換と大きく違うところです。

ここで重要なのは、根底に人間同士の信頼関係があることです。

話は少し逸れますが、映画などの最後に製作に関わった人びとの名前を記すことを「クレジットする」と言いますね。「IOU」は、「私はあなたに負うもの(恩義)がある」、つまり協力してくれた人びとに対する感謝やオマージュでもあるのです。

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