中国が圧力?インドネシア「日本の中古電車禁止」 外交弱まる中、民間が築いた信頼維持できるか

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さて、6月17日から23日の日程で、天皇皇后両陛下が、即位後初となる国際親善先としてインドネシアを訪問された。最初の行き先として同国が選ばれるのは恒例となっており、上皇陛下ご夫妻も1991年に即位後初の親善の場として訪問されている。それほどまでに日本にとっては重要なパートナーであるということを示している。

しかし、インドネシアにとって日本は重要なパートナーではなくなりつつある。そのような中で、天皇陛下も両国の若者の交流が深まることへの期待を強く述べられた。これはごもっともである。しかしながら、そのご訪問日程に目新しいものはなく、先述のギナンジャール氏にゆかりのある場所、人物が多かった。最大の目的であった若者との交流も、同氏の影響下にある私立大学で行われた。

しかも、聞くところによれば、両陛下と若い世代との交流に対して、同氏は前向きではない様子であったという。戦後80年を迎えようとする中、未だに戦後賠償の呪縛にとらわれ続ける、いや、それ以外の外交ツールを持とうとしない日本の行く先が案じられる。そして、6月22日にルフット海事投資調整大臣から発せられた中古車両輸入禁止宣言により、それを現実のものとして実感した。

日本型鉄道輸出の「聖域」守れ

ともあれ、不幸中の幸いは、日本からの中古車両の輸入が途絶えてもなお、新型車両に日本の技術が引き継がれることである。KCIの踏ん張りのおかげで、日本にとって最悪の事態は免れた。20年以上の長きにわたり中古車両が絶え間なく送り込まれ、個人の善意による草の根レベルのサポートから始まり、そして本格的な鉄道ビジネスパートナーとしての信頼関係が築かれたことが大きいだろう。まさに民間外交が勝ち取った果実である。

KCI 元東急8000系
ジャカルタに導入された中でも最古参となる元東急8000系。車齢は50年を超える(筆者撮影)

課題はKCIが求める短期間での納入に日本の車両メーカーが応じられるかどうかだ。順調に進めば、1997年以来、実に約25年ぶりにINKAを活用した日本の車両メーカーのノックダウン生産が実現する。これまで根こそぎヨーロッパメーカーに奪われていた部分を奪還するチャンスである。当初は日本政府はもちろんのこと、日本の車両製造業界ですら反対の声を上げていた中古車両輸出だが、結果的には中古車両の存在に救われた格好である。

短納期のみならず、インドネシア側からの無理難題な要求は当然ありえるだろう。そして何より、INKAの工場でインドネシア人によって日本品質の車両を製造するのは並大抵のことではない。単にパーツや電機品を納入して完了とはならない。たった24編成の製造では、さほどの利益は出ないかもしれない。

しかし、先代のたゆまぬ血と汗のにじむ努力によって守られてきたこのマーケットをみすみす手放していいものか。これはKCIからの最後のラブコールである。リスクを語るだけでは何も始まらない。今こそ、メーカー、そしてサプライヤーが一丸となり、中古車両に頼らない次なる段階へと引き上げるときである。唯一無二の日本型車両の聖域を守れるかどうかは、日本側の本気度にかかっている。

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高木 聡 アジアン鉄道ライター

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たかぎ さとし / Satoshi Takagi

立教大学観光学部卒。JR線全線完乗後、活動の起点を東南アジアに移す。インドネシア在住。鉄道誌『鉄道ファン』での記事執筆、「ジャカルタの205系」「ジャカルタの東京地下鉄関連の車両」など。JABODETABEK COMMUTERS NEWS管理人。

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