中国が圧力?インドネシア「日本の中古電車禁止」 外交弱まる中、民間が築いた信頼維持できるか
また、2024年の導入を目指す「つなぎ」となる輸入新車について、KCIはJR東日本の通勤車両をベースとした車両の導入を希望している。国産新車は、この輸入車両を元にしたノックダウン生産になる可能性が極めて高い。輸入新車は3~4編成を導入する予定だが、この数は中古車両導入用に確保していたKCIの予算を流用するものと思われる。中古車両価格(輸送費含む)は新車の10分の1程度というのがざっくりとした考え方で、この数はちょうどつじつまが合う。
KCIのアン・プルバ副社長は、2023年の8月から9月にかけて契約を結び、納期は14~15カ月を希望しているという。また、国産新車は追加パッケージとして、8編成増やし、計24編成にする用意があるという。
日本政府の冷ややかな反応
ただ、ここまでインドネシアでは世論が過熱し、世間の注目を浴びていた問題に、日本政府の反応は冷ややかであった。中古車両輸入の是非に対して関与しないというスタンスで、無関心を決め込んだ。いや、正しくは、2022年末時点で本件に関してほぼ何も知らなかったと言っても過言ではない。
日本にとって重要地であるインドネシアには、現地政府との調整役、また専門調査官として数十年来にわたって継続的に国土交通省から人員が派遣され、JICAや大使館に配置されている。このような例は極めて異例である。本来であれば、2020年以降の国産新車への切り替えという動きをいち早く察知し対応しなければならなかったはずだ。にもかかわらず、INKAをシュタドラーと組ませてしまった。
今回の中古車両輸入禁止の件にしても、中国の動きに多少なりとも翻弄されている。本当に中国が高速鉄道融資を引き合いに出していたのならば、完全に外交負けである。もっとも、中古車両の輸入は、下手をすれば日本が廃棄物を売りつけていると解釈される可能性をはらんでおり、細心の注意を払って扱わなければならない問題である。現地側の意向抜きに無理に動かせば批判を受けることになり、政府としては関与しないという方針はある意味で正解ではある。
しかし、今回の状況を見れば、インドネシアの世論も政府も、ほぼ中古車両輸入賛成の方向を向いていた。ネックとして残ったのは、中国の出方と工業省の態度である。
日本政府とて、インドネシアに対して切れるカードを持っていないわけではない。とくに近年は電気自動車の組み立てやバッテリー生産、また新首都ヌサンタラの開発に対して、投資の面でも協力していくことを確認している。それとも、日本からの投資が消えたところでもはや影響はないと思われるほど、日本の経済的地位は落ちぶれたというのだろうか。少なくとも、中国というワードをちらつかされたことに対しては、日本政府は屈辱を感じるべきである。インドネシア政府に完全になめられていると言わざるをえない。
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