冷房需要40%低減「世界で一番白い塗料」の正体 最強の遮熱性能に世界各国のメーカーが熱視線

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とはいえ、放射冷却スポットを世界各地に分散すれば、都市部のヒートアイランド現象の相殺など、地球全体と地域の双方にメリットがもたらされる可能性はある。ヒートアイランド現象は、大多数の建造物が森林、水、植物に覆われた自然の地表よりもはるかに多くの熱を吸収し、閉じ込めてしまうために起こる現象だ。

普通の白い塗料には不可能だった熱反射

ギリシャのサントリーニ島やモロッコのカサブランカ(その意味はまさに「白い家」だ)といった暑くて美しい場所では、昔から住まいの温度を下げるために白いペンキが使われてきた。屋根を白く塗ることを検討する自治体も増えている。ルアンによると、一般的な市販の白色塗料でも太陽光の80〜90%は反射する。

ただ、それでも熱の10〜20%は吸収されるため、表面の温度が上がり、周囲の気温の上昇につながっている。これに対しパデューの塗料は、太陽熱の吸収量が極めて小さく、それを大きく上回る熱量を宇宙に放射するので、表面温度は周囲の気温よりも低くなる。

懸念がないわけではない。パデューの標準バージョンの超白色塗料には硫酸バリウムが使われているが、硫酸バリウムを手に入れるために採掘を増やせば、二酸化炭素の排出も増える。ただ、大多数の商業用塗料に使われている二酸化チタンも採掘が必要だとルアンは指摘する。

気候をコントロールする操作を行うジオエンジニアリング(地球工学)には、根本的な問題から目をそらしているという批判もある。気候変動の壊滅的影響を避けるには、人類は化石燃料を燃やすのを止める必要がある。

しかし、あらゆる化石燃料の使用を直ちに止めたとしても、大気中に閉じ込められている大量の温室効果ガスによって気候災害は続く。前出のマンデーは、大規模な放射冷却は救命ボートのようなものだと言って、こう続けた。

「これは気候問題に対する長期的な解決策には到底なり得ない。全体をコントロールする努力を続けるなかで、問題の悪化を抑えるために短期的に行える策の1つだということだ」

(執筆:Cara Buckley記者)
(C)2023 The New York Times

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