冷房需要40%低減「世界で一番白い塗料」の正体 最強の遮熱性能に世界各国のメーカーが熱視線
この塗料は世界で最も白いと公式に認定されているものの、ルアンによれば、光を散乱させるため目が眩むほど白いわけではない。見た感じはホームセンターなどで売られている白いペンキと大差ない。
現在、耐久性と防汚性を高める作業が進行中で、商業化には少なくともあと1年はかかる。パデュー大学のチームはある企業と提携しているが、その名前はまだ明かせないとルアンは言う。この超白色塗料をベースとしたカラー塗料の開発も進められている。「白ほど理想的ではないが、ほかの市販カラー塗料よりは優れている」とルアン。
地球温暖化を止められる可能性
気候変動危機が深刻化するなか、科学者たちはコーティングやフィルムなど、地球を受動的に冷却する機能を持つ反射材の開発を急いでいる。
クリーンテクノロジーを研究するカリフォルニア大学デービス校の電気・コンピューター工学教授ジェレミー・マンデーは、このように熱を地球から宇宙に反射しても宇宙空間への影響はほとんどないと語る。太陽は地球の10億倍以上もの熱を放出しており、しかも、この方法は太陽がすでに放出した熱を反射するだけ。「海にコップ1杯の水を注ぐようなものだ」。
マンデーの計算によると、パデュー大学の超白色塗料のような素材で地球の表面の1〜2%(面積で言うとサハラ砂漠の半分強)を覆えば、地球の吸収熱量が放出熱量を上回ることはなくなり、地球の気温上昇は止まる。
ただ、サハラ砂漠の半分というように、特定の地域の地表をこれほどの熱放射性素材で覆うべきではないとマンデーは言う。理由はたくさんあるが、主なものとしては、現実的でないこと、野生生物に対する懸念、特定地域の気温がいきなり低下することによる気候の乱れなどが挙げられる。