冷房需要40%低減「世界で一番白い塗料」の正体 最強の遮熱性能に世界各国のメーカーが熱視線
パデュー大学の機械工学教授シュウリン・ルアンが新しいタイプの塗料を作り始めたとき、彼はギネス世界記録を狙っていたわけではなかった。目標はもっと高いところにあった。地球を熱くすることなく建物を冷やす、というものだ。
ルアンと彼の研究チームが2020年に発表した反射板の機能を持つ白色塗料は、太陽光線の95%を地表から大気圏を経て宇宙へ跳ね返すことができた。その数カ月後、ルアンのチームは太陽光線反射率を98%まで高めた、さらに強力な塗料の配合を発表した。
エアコンの必要性が4割も減少
その特性はスーパーヒーロー並みといってよい。外気温に比べ表面温度を真昼で約4.4℃、夜間で最大約10.6℃も下げ、建物内部を涼しくし、冷房の需要を40%も減らすことができる。炎天下でも触るとひんやりしている、とルアンは言う。エアコンと違って、動かすためのエネルギーを必要とせず、外気温を上昇させることもない。
2021年にギネスに史上最も白い塗料と認定されて以来、いくつかの賞を受賞してきた。もとは屋根用の塗料として開発されたものだが、衣類、靴、自動車、さらには宇宙船などのメーカーがこぞって求めるようになった。ルアンのチームは昨年、自動車用に軽量化した塗料を開発したと発表した。
「実際のところ、私たちは世界一白い塗料を開発しようとしていたわけではなかった」とルアンは話す。「気候変動対策に貢献したかった。気候変動の危機は深刻化し、悪化の一途をたどっている。私たちは、エネルギー使用量を減らしながら地球を冷却することが可能かどうか確かめたかったのだ」。