為替ヘッジが首を絞める「大学ファンド」の投資眼 安全運転が裏目?年3000億円資金拠出に暗雲

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大学ファンドの運用は科学技術振興機構が担っている (撮影:今井康一)

「国際卓越研究大学に選ばれるのはほんの一握だろう。支給額も想定より少なくなるかもしれない」。ある国際卓越研究大学の候補校の関係者は大学ファンドの運用成績を見て落胆の言葉をこぼす。

国立研究開発法人・科学技術振興機構(JST)が7月7日に発表した業務概況書によると、10兆円規模の大学ファンドの2022年度の収益額は604億円の赤字で、収益率はマイナス2.2%と苦しい結果となった。

大学ファンドの収益から国際卓越研究大学へ支援

この大学ファンドは、岸田政権が立ち上げた目玉政策のひとつ。10兆円を元手に、年3000億円程度の運用益を捻出し、得られた資金を世界最高水準の研究大学の創出を目指す「国際卓越研究大学」に配分する。国際卓越研究大学には5校程度を選ぶ想定で、東京大学、京都大学、早稲田大学など国立、私立大学あわせて10校が申請した。現在、審査が行われており、2023年秋に認定校を決定する予定だ。

大学ファンドは2022年3月から運用を開始し、2026年度末までに年3000億円の運用益を生み出せるようにする。さらに、2031年度末までに、グローバル株式65%、グローバル債券35%相当のポートフォリオ(レファレンスポートフォリオ)を基準にした、基本ポートフォリオを構築する。基本ポートフォリオ構築後は年3%+物価上昇率以上の運用益が目標だ。運用は科学技術の振興や人材育成を目的に設立されたJSTが担い、専門部門を設置して運用体制を敷く。

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