JSTの資料をみると、2022年度末のポートフォリオのリスク量は、JSTが許容する最大リスク量の4割弱に留めている。財政投融資を返済していくためにも、最初から元本を大きく割り込む可能性がある過度なリスクを負うことはできない。
運用開始にあたり、喜田理事は「短期的にみると為替はボラティリティーのかなりの要素を占める。大学ファンドはボラティリティーに耐えるためにある程度は為替をヘッジする必要があるし、運用開始時はとくにヘッジを意識して運用を行う」と述べていた。
2031年度までに基本ポートフォリオを確立させる予定だが、確立までの期間を運用立ち上げ期と定め、この期間は慎重にリスクをとっていく方針だ。
また、JSTは時間をかけてグローバル株式やオルタナティブなどの資産を増やし、運用益を確保していくと説明するが、グローバル債券を多く保有していることが足かせになる可能性もある。
リスクとリターンのバランスをどうとっていくのか
JSTが示す資産構成割合の移行イメージをみると、運用開始から10年目の2031年度にはグローバル債券、グローバル株式がポートフォリオに占める割合は4割程度となっている。グローバル株式の割合を高めていくためには手元預金に加え、現在、ポートフォリオに占める割合の高いグローバル債券を上手く売り抜いていく必要がある。
財政投融資が原資のため、過度なリスクがとれないとはいえ、高水準の為替ヘッジ比率や債券重視の資産構成といった慎重なリスクテイクでは、2026年度までに年3000億円の運用益を達成することは難しい可能性がある。
そうすると冒頭の大学関係者が懸念するように、5校程度認定するとされていた国際卓越研究大学認定校の数はさらに絞らざるえなくなり、支給額の縮小も現実味を帯びる。
大学への支援、財政投融資の返済と大学ファンドには重責がつきまとう。重責を果たすために、リスクとリターンのバランスをどうとっていくのか。喜田氏の手腕が問われる。
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