南阿蘇鉄道、7年ぶり「全線再開」までの長い道のり 三陸鉄道の事例を参考に復旧スキームを構築

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JR九州の古宮洋二社長は「阿蘇は九州の宝。阿蘇の“蘇”はよみがえるという漢字である。阿蘇を観光で蘇らせたい」と話す。乗り入れに必要な線路などの整備費用は自治体が負担し、豊肥本線乗り入れに備え、南鉄は新型車両も導入した。なお、別途、県が進めている熊本空港アクセス鉄道計画でも空港から肥後大津経由で熊本駅と結ぶ案が2022年12月に決まっている。

南阿蘇鉄道草村社長・JR九州古宮社長
記念式典であいさつする南阿蘇鉄道の草村大成社長(左)とJR九州の古宮洋二社長(記者撮影)

記念式典には斉藤鉄夫国交大臣が出席したほか、岸田文雄首相もビデオメッセージを寄せるなど、政府サイドの力も入っていた。斉藤大臣は「創造的復興のリーディングケースである」とあいさつで述べた。南鉄が三鉄の事例を参考にして復旧を果たしたように、今後は南鉄の復旧スキームが今後のモデルケースになるのだろう。

次世代への可能性「負債」にならぬよう

式典終了後、参加者たちは式典列車に乗車するため高森駅に向かった。ところが、それまで時折晴れ間をのぞかせていた空がにわかに曇りだし、列車出発のわずか1分前に突然、どしゃぶりの雨が降り出した。

「出発進行」――。12時20分、豪雨の中を式典列車は予定どおり肥後大津に向けて出発した。幸いにしてその後15分ほどで雨は止んだが、もし長時間にわたって降り続けば、甚大な災害を引き起こす可能性もないとはいえない。熊本県では2020年7月の豪雨の影響でJR肥薩線が橋梁などの多くの設備が流失するなどの被害が発生し。復旧の道筋はまだ見えない。鉄道復旧に喜んでばかりいてはいけないという天からのメッセージのように思えた。

地震に加えて豪雨など自然災害のレベルが以前にもまして上がっている。国による復旧スキームは整備されたが、その適用を受けるためには、復旧後に鉄道の利用が促進されることがきちんと示される必要がある。「次の世代への可能性を残したい」と草村社長は述べたが、復旧後に鉄道利用者が増えず、鉄路が次の世代への負債になるようなことは絶対にあってはならない。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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