現に、今の所得税制では、退職金を一時金払いで受け取るときのほうが、年金払いで受け取るよりもトータルで払う所得税が少なくなることが多い。だから、現行の退職金課税は、退職金の受け取り方やライフコースの選択に中立的ではない。この点を、政府税調の中期答申で指摘したのである。
退職金課税について触れてはいるが、「サラリーマン増税」と呼ばれるような取り上げ方はしていない。
誰がどのような形で負担するのか
子ども予算や防衛費など、新たな財政需要が生じているだけに、それをいっさいの増税なしに、後代に負担を付け回す形で財源を確保するわけにはいかない。そうした雰囲気を世論は感じ取っているせいか、「税制の見直し」というと直ちに「増税」と想起しがちではある。
増税を避けたいなら、国民にとって優先度の低い歳出を削るしかない。しかし、削減対象となる歳出が多くは見つからないなら、何らかの増税は甘受せざるをえない。
そうなった場合は、どの税目でどの程度、どの国民に負担増を求めるかを決めざるをえない。それは、行政サービスの便益を受けた国民を中心に負担増を求めるか、負担能力のある国民を中心に負担増を求めるか、が問われる。
いっさいの増税を避けていては財源が確保できないのなら、今後問われるのは、増税か減税かのどちらか、という選択ではなく、どの税の増税ならまだ甘受できるか、という選択である。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら