日曜劇場「VIVANT」"半沢直樹超え"見据えた勝ち筋 "日曜劇場アベンジャーズ"企画は吉と出るか

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そして忘れてはならないのは、考察要素。二宮が主演した“考察もの”日曜劇場『マイファミリー』(2022年)的な謎がふんだんにちりばめられている。「VIVANT」とは何か、誤送金を仕組んだ者は誰なのか、乃木には何か秘密があるのではないかと視聴者の考察心をくすぐってくる。

乃木の唯一の特技である手の感覚で重さを測れること、乗馬のコツを思い出すこと、CIAに友人がいること、夢に出てきた過去の謎、多重人格のようにもう1人の乃木が出てくることなどが、気になる点である。

砂漠で1人で行動するときに独り言ばかりになるのも手持ち無沙汰だから、もう1人の自分と会話することにした、という劇作の都合かなとも思うが、さて?

また、“日曜劇場アベンジャーズ”といえば、乃木の同僚・山本巧を演じる迫田孝也も、考察系日曜劇場『天国と地獄〜サイコな2人〜』(2021年)で極めて重要な役で出ていたが果たして今回は? ……等々、考察要素が多いことで、後半戦で確実に視聴率を上げてくるであろうと予測する。

VIVANT モンゴル
第1話の印象的だった冒頭シーン。“もう1人の自分”と会話しながら砂漠を彷徨う乃木(写真:『VIVANT』公式サイトより)

「日曜劇場」に新しい時代が来ている

さまざまにちりばめられた要素を、視聴者それぞれが楽しめる。ひとつの方向に熱狂させないところが巧妙で、今、こういう作品を選択してきたことが、時代を捉えているといえるだろう。

かつて、『半沢直樹』が「倍返し」「土下座」のパワーワードで誰もが間違えようなく、同じ方向で楽しむドラマであったことに比べて、『VIVANT』はずいぶんと角度の広い、多様性があるドラマになっている。

脚本も共同脚本体制のようだし、原案が福澤とのことで、ハリウッドのライターズルーム的に、複数のライターが集結して、それを統べているのが福澤なのではないかという気もする。いずれにしても日曜劇場に新しい時代が来ているのだと『VIVANT』を見て感じる。

題材がバラけすぎ、風呂敷を広げすぎで求心力をなくすか、1つひとつが強い柱となってより多くの人に訴求するか、勝負どころである。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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