カワサキ「ZX-4Rシリーズ」400cc・4気筒に歓喜 7月15日発売、なぜここまで注目を集めるのか?

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YZF-R7の価格(税込)は、105万4900円だから、ニンジャZX-4RRより10万円ほど安い。一方、スペック的には、例えば、YZF-R7のエンジンは最高出力54kW(73PS)/8750rpmだから、ニンジャZX-4RRの最高出力57kW(77PS)/1万4500rpmのほうが高い。しかもラムエア加圧時、ニンジャZX-4RRは59kW(80PS)を発揮する。もちろん、最大トルクは、排気量がより大きいこともあり、YZF-R7は67N・m(6.8kgf・m)/6500rpmで、ニンジャZX-4RRの39N・m(4.0kgf・m)/1万3000rpmよりも大きい。そのため、走る場所によって得意・不得意はでるだろう。だが、ニンジャZX-4RRは、400ccモデルでありがら、格上となる700ccマシン・YZF-R7と互角か、それ以上のパフォーマンスを発揮することが期待できる。

YZF-R7のサイドビュー
YZF-R7のサイドビュー(写真:ヤマハ発動機)

なお、車体では、YZF-R7は全長2070mm×全幅705mm×全高1160mm、ホイールベース1395mmだから、ニンジャZX-4RRより大柄だ。ただし、車両重量では、ニンジャZX-4RRの189kg(ニンジャZX-4R SEは190kg)に対し、YZF-R7は188kg。重さはほぼ同じだ。しかも2気筒エンジンであることで、車体がかなりスリムなため、扱いやすさも抜群だ。この点でも、250ccベースで、軽量・コンパクトな車体を持つニンジャZX-4RRとかなりいい勝負となりそうだ。

あとは、運転できる免許だが、ニンジャZX-4RRが普通二輪免許で乗ることができるのに対し、YZF-R7は取得のハードルがより高い大型二輪免許が必要だ。エントリーユーザーなどにとって、入門バイクとなりやすいのは、ニンジャZX-4RRのほうかもしれない。

ホンダのCBR650R
ホンダのCBR650R(写真:本田技研工業)

一方、より公道走行に向けた仕様といえるニンジャZX-4R SEは、例えば、ホンダの「CBR650R」あたりがライバルになるかもしれない。648cc・4気筒エンジンを搭載し、サーキット走行よりも、ワインディングなどでのスポーティな走りを重視したモデルだ。こちらの価格(税込)は、107万8000円~111万1000円だから、ニンジャZX-4R SEの112万2000円とかなり近い。

ただし、エンジンのパワーは、CBR650Rが最高出力70kW(95PS)/1万2000rpm、最大トルク63N・m(6.4kgf・m)/9500rpmとより大きい。直線などでの加速ではCBR650Rのほうが有利な気もするが、車両重量が208kgと、ニンジャZX-4R SEの190kgもよりも18kgも重い。15~18PSといったパワーの差が走りの余裕となるかは、一概には言えず、走る場所によっては互角になるケースもあるだろう。

また、CBR650Rには、USBソケットなどの装備はないので、バイクでスマホの充電などはできない。また、運転には、こちらも大型二輪免許が必要となるため、エントリーユーザー向けのハードルの低さという点でも、ニンジャZX-4R SEに軍配が上がるだろう。

ニンジャZX-4Rシリーズの行方

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いずれにしろ、ニンジャZX-4Rシリーズは、かなり市場から注目されていることだけは確かだ。その証拠に、カワサキは、2023年3月の発表当初、国内の発売時期を「2023年秋頃」としていたが、その後、夏の7月15日発売に前倒しした。おそらく、それほど市場からの反響が大きかったのだろう。400cc・4気筒のスポーツバイクという、「古くて新しい」ジャンルに投入したモデルがニンジャZX-4Rシリーズ。こうしたカワサキの戦略に対し、市場が今後どのように反応していくのかが気になるところだ。

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平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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