英語の名人「新渡戸稲造」地道で泥臭い英語習得法 東京人よりイギリス人と話すほうが楽だった

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抽象的でわかりづらいですが、辞書の記載を見る限りでは、両者に大した違いはなさそうです。実際、イギリスを代表する詩人であるワーズワスでさえも、両者の区別ができていなかったのだとか。英語母語話者ですらこのような状況ですので、英語を母語としない私たち日本人が理解できないのも無理はありません。

それでは、稲造は「truth」と「fact」の違いをどのように捉えたのでしょうか。稲造は、「fact」が客観性の高い単語であるのに対し、「truth」には話し手の主観が強く反映されていると考えました。「fact」は、実際に目で見たり手で触ったりすることのできるもの。一方「truth」は、その単語を使用する人たちが「正しい」と解釈した内容であるといいます。

さらに、稲造はこう考えました。「truth」という単語を使う人が理解している内容は、本来の「fact」が示す内容の半分どころか、千分の一にも及ばないと。そして、これを政治の世界にたとえ、物のリアリティーをつかまないさまは、理想を第一とするマルクス主義者の手口によく似ていると説きました。

このように稲造は、細かな語義の違いにまでメスを入れ、ネイティブ顔負けの語学力を身につけていきました。その結果、日本人の道徳観念を英語で著した世界的ヒット作『武士道』(原題『Bushido, The Soul of Japan』)が生まれるに至ったのです。

カタカナ語に敏感に反応

ニュースやCMを見ていると、多くのカタカナ語を目にします。例えば、近年その重要性が叫ばれている「デジタルトランスフォーメーション」。「DX」とも呼ばれますが、言葉の意味をきちんと理解できていますか。実は稲造も、現代の私たちと似たような状況に直面していたようです。

京都へ行き、街中をぶらぶら歩いていたときのこと。古本屋から焼き芋屋の前へ差しかかり、焼き芋のよい匂いにつられて、ふと看板に目をやると、そこには「スヰート・ポテト」の文字が。稲造はその看板を見ながら、「焼き芋や丸焼きでもよいのではないか」「そもそもスイートポテトというものは多分イギリスにはない」などとあれこれ思い巡らしながら、その和訳に首をかしげたといいます。

稲造が残した記録によると、当時さつま芋は「栗(九里)よりうまい」ことから「九里はん」とも呼ばれていましたが、なぜ甘さを強調して、あえて「スヰート・ポテト」にする必要があるのか、不思議でならなかったそうです。 

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