フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く
事件はフランス内外で政治的な波紋を広げている。
マクロン大統領は6月30日、ブリュッセルで開かれていた欧州連合(EU)首脳会議を途中で切り上げて帰国し、7月2日からのドイツへの公式訪問を取りやめ、事件への対応に当たった。
3月には年金改革を巡る混乱の発生を受け、英国のチャールズ新国王がフランス訪問を延期したばかりで、フランスの内政混乱はマクロン大統領が重視する外交にも少なからず影響を及ぼしている。
EUの二大国であるドイツとフランスは最近、将来的な原子力エネルギー利用の是非、対空防衛システムの共同調達、ウクライナ支援、財政規律の見直し協議など、さまざまな政策分野で足並みの乱れを露呈してきた。
フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は、かつてのミッテラン=コール時代やサルコジ=メルケル時代のような、首脳同士の個人的な信頼関係を構築できていないとも噂される。
独仏のスキマ風はEUにもマイナス
フランスは年金改革に暴動と内政が混乱、ドイツはイデオロギーの異なる3党が集まる連立政権内の不協和音に追われ、両国とも内向きになっている。ドイツは合意したはずの政策が連立政権内でひっくり返されることもあり、フランスの政府関係者からは、「ドイツにはまるで3人の首相がいるようだ」との不満の声も聞かれる。
独仏関係の弱体化とそれに伴うリーダーシップの低下は、EUの政策運営や統合強化の行方にも影を落としかねない。2024年半ばにはEUの共同立法機関である欧州議会の選挙が控えており、EUの執行部が総入れ替えとなる。現体制の下でEU関連の政策実現に残された時間は少ない。
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