フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く
フランスは古くはアフリカの旧植民地諸国から、最近ではより幅広い国々から多くの移民を受け入れてきた。人口に占める移民の割合は1968年の6.5%から2021年には10.3%に増加し、フランス国籍を持つ移民の子孫を含めると、外国にルーツを持つ人口の割合はその数倍に達する。
移民や移民の子孫は、移民のバックグラウンドを持たないフランス人と比べて、失業率が高く、低技能・低賃金労働に従事し、生活環境や住環境が厳しく、健康状態も悪いことが各種の統計から確認される。
こうした状況は、フランス語の運用能力やフランスの文化や生活習慣への理解が十分でなかった第一世代の移民だけでなく、フランスで生まれ育った第二世代や第三世代の移民の子孫でもそれほど改善していない。2020年の調査では、両親が移民である子弟の30%が「民族、国籍、人種に基づく差別を経験したことがある」と回答している。
マグレブ(モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどの北アフリカ諸国の総称)にルーツを持つ移民や移民の子孫は、同じような経歴を持つ非移民のフランス人に比べて、採用担当者から面接に呼ばれることが少なく、失業のリスクが高く、不当に仕事を拒否されることが多いとの調査結果もある。
9月ラグビーW杯の会場は目と鼻の先
暴動が比較的短期間で落ち着きそうなことから、フランス経済への影響は、それほど深刻なものとはならないだろう。とはいえ、フランスはこれから観光シーズンの最盛期に入り、新型コロナウイルスの感染拡大で自粛していた海外からの観光客が押し寄せてくることが期待されていた。暴動の発生を受け、宿泊予約の一部がキャンセルされたようだ。
9月初旬から10月下旬までの間、フランス各地で開催されるラグビー・ワールドカップの準決勝や決勝戦が行われるパリ郊外のスタッド・ド・フランス(サン=ドニ・スタジアム)は、バンリュー地区に隣接し、今回の暴動の発生現場の1つから目と鼻の先だ。
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