フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く
サン=ドニ・スタジアムは、2024年夏のパリ・オリンピック=パラリンピックの開会式・閉会式が行われるメインスタジアムでもあり、選手村、メディアセンター、水泳・バドミントン・バレーボール競技の会場もパリ北部の移民居住地域の中に点在する。
同スタジアム周辺は、2015年のパリ同時多発テロ事件での自爆テロ現場の1つだったほか、2023年のサッカー・チャンピオンズリーグの決勝戦後にも暴動が発生した。
マクロン大統領は就任以来、教育や公共住宅など、バンリュー地区に大規模な投資を行ってきた。この地域では、2024年夏のオリンピック・パラリンピック関連の建設工事も同時に進んでいる。
移民地区への支援に「農村軽視」と批判
一方、過去2度の大統領選挙でマクロン氏と対峙した極右政党・国民連合のルペン氏は、政府によるバンリュー地区への手厚い政策支援の結果、地方の貧しい農村地域が軽視されていると批判してきた。
長期的な財政安定に向けて、国民に年金の支給開始年齢の引き上げでの協力を求めてきたマクロン大統領が、社会的不平等の是正を目的にバンリュー地区への追加の財政支援を決定すれば、ルペン氏に格好の得点機会を提供することになりかねない。
ルペン氏は2022年の大統領選挙での敗北後、極端な政策主張を封印し、責任ある政党への脱皮を有権者にアピールしている。物価高騰による生活困窮や年金改革での国民の反発も追い風に、支持を伸ばしてきた。
フランスでは大統領の3選が禁止され、マクロン大統領は2027年の大統領選に出馬できない。マクロン大統領の誕生以降、フランス政界を引っ張ってきた伝統的な右派の共和党と伝統的な左派の社会党は党勢凋落が著しい。
今回の問題への対応は、ポスト・マクロンをにらんだ政局展開を左右しかねない。
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