医師が警鐘、「登山で頭痛は高山病」と思う人の盲点 「ノドが渇いたら水分を摂る」が不十分なワケ

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2つめの間違いは、登山に持っていく水分として、水やお茶、スポーツドリンクが多いことだ。

特にスポーツドリンクは、「エネルギーも塩分も補給できる」と思って選んでいる人も少なくないようだ。しかし、脱水時にもスポーツドリンクで用が足りるかと言えば、そうはいかない。

「脱水時はスポーツドリンク」は間違い

事実、スポーツドリンクは発汗で失われるナトリウムなどの電解質を含んでいる。それ以上に、砂糖が多く入っているので甘くて飲みやすい。脱水に至る前ならそれでいい。

しかし脱水状態を治すには、電解質が足りない。

脱水時の備えとしては、「飲む点滴」とも言われる「経口補水液」が安心だ。

もともと医療の現場でも脱水の予防や治療に広く使われてきたもので、日本では大塚製薬の「OS-1」(オーエスワン)が有名だ。今では他社製品も増え、主にドラッグストアでペットボトルやパウチで販売されている。

個人的に登山時に携行をお勧めするのは、パウダータイプだ。大塚製薬の通販サイトで販売されている。500ミリリットル用だとよく使うナルゲンボトル(水筒)にちょうどいいし、山で水が得られれば溶かして飲むことができる。

食塩と砂糖が入っているので、コントロールされていない高血圧や糖尿病の人には有害に作用する可能性はあるが、リスクは低い。むしろ山で筋肉がけいれんしたり、疲労感で動けなくなったり、体調が悪いことのほうが、遭難リスクを上げる(そもそも登山という極限状況に身を置かれることについて、体調をよく判断いただきたい)。

脱水かどうか確信が持てないなら、まず500ミリリットルを飲んでみて判断するのは悪くない。

飲んで30分ほどで元気になれば、その症状は脱水が原因であった可能性が高い。回復しないならば、別の原因を考えなくてはならないし、ひどく体調が悪いならば救助を要請すべきなのは当然だ。

コロナ禍からようやく抜け出した今年の夏は、山小屋やテント場も賑わいが戻ってきている。食堂もアクリル板が撤去され、黙食の必要もなくなった。いい景色を眺め、仲間と会話しながら楽しむ食事は、登山の醍醐味のひとつだ。

山を愛する者として、一人でも多くの人に、安全に山を楽しんでもらえたらと思う。

久住 英二 立川パークスクリニック院長

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科専門医、血液専門医であり、旅行医学やワクチンに関する造詣が深い。国家公務員共済組合連合会虎の門病院で内科研修ののち、臍帯血移植など血液がんの治療に従事。血液内科医としての経験から感染症やワクチンにも詳しく、常に最新情報を集め、海外での感染症にも詳しい。2024年12月に立川高島屋SC10階に内科、小児科、皮膚科の複合クリニック「立川パークスクリニック」を開業した。

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