医師が警鐘、「登山で頭痛は高山病」と思う人の盲点 「ノドが渇いたら水分を摂る」が不十分なワケ

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実は登山には、脱水を起こしやすい“落とし穴”がある(写真:mits/PIXTA)

富士山も山開きし、梅雨が明ければ本格的な夏山シーズンの到来だ。

ただ、今シーズンは遭難者の増加が予想されている。登山を自粛しジムにも行かず家に引きこもっていた人々が、コロナ禍前と同レベルの山に行き始めるからだ。体力は、自分たちの想像以上に低下している。

私は旅行医学の専門家として、登山者への高山病予防薬や、健康上のアドバイスを行っている。自らも登山を趣味とし、山の素晴らしさとともに怖さもよく知っている。そこで、実体験に基づいた「山行を楽しむ基礎知識」を解説していきたい。

頭痛や脚のけいれん、倦怠感…

それなりにちゃんと登山をしたことがある人なら、脚の筋肉がけいれんして痛みを感じたり、頭が痛くなったり、下山後も倦怠感が続く、といった症状は経験があるかもしれない。自分でなくても、仲間や周囲にそういう人がいたことと思う。

筋肉のけいれんは疲労でも起きるし、頭痛は高山病の可能性はある。ただ、いつも登っている山なのに、そんなに標高は高くないのに、という場合、原因は「脱水症」のことも多い。

実は登山には、脱水を起こしやすい“落とし穴”がある。前夜から当日朝の過ごし方だ。

山は早発ちが原則なので、深夜バスでの移動や車中泊、ホテルでの前泊になる場合が少なくない。深夜バスではトイレに立ちたくないので水分摂取量が減るし、睡眠不足で自律神経が乱れやすくなる。車中泊や前泊では、お酒を楽しむ人が多いだろう。飲酒は利尿を促し、また体内でアルコールを分解する際に水を要するため、脱水になる。

そもそも普段より脱水状態で山に臨むことになりやすい、というわけだ。

まずは登山前に、意識的に水分を摂ってから臨もう。朝ご飯に、味噌汁やスープを飲むのもお勧めだ。

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