自民党・稲田朋美氏「二島返還方針は正しかった」 櫻井よしこ氏「北方領土奪還のチャンスはある」
橋本五郎氏(読売新聞特別編集委員):私は限りなくそう(合意に近づいていた)思う。しかし、それをやっぱりロシアの国内が許さなかったということがあったと思う。これについては、日本の四島一括返還という大事な原則、それを踏みにじるものであるという批判があるけど、私は、そうは見ない。(ドイツ帝国の)ビスマルクが言っているように、「政治は可能性の技術」だ。可能性があることを追求する。四島一括返還を求めるというのは、100年経っても帰ってこないってこと。日ソ共同宣言の中で二島返還とまず言っている。これに手をつけて何が悪いのか?と私は思う。なので、あのときかなり合意に近づいたと思う。ただ、残念ながら、そのプーチンでさえロシア国内を説得できなかった。それはそれなりの理屈がある。血で洗われた北方領土、それは獲得したものである、というロシア国内の意見は強い。だから、これだけ強大な権力を持っているはずのプーチンでさえ、できなかった。領土問題難の難しさがあるが、この(二島返還の)可能性を追求することが大事だったと思う。
稲田朋美氏(自民党元政調会長):私は防衛大臣のとき、本当にもうロシアがもうアメリカに対して不信感いっぱいで、そのときイージスアショアを置くということについても、ミサイル防衛で、ロシアは「自分のところにミサイルが飛んでくる」ということを言う。もうすごい不信感があって、ロシアは(北方領土を)絶対にこれは返さないなって思った。ただ、安倍元首相とプーチン氏との関係で、もし二島返還が実現し、平和条約が締結されたら、やっぱり対中国、対北朝鮮という意味においても、非常に国益に合致するということで、安倍元首相は頑張られたが、やっぱりロシアはそんな戦争で取ったものを返さないと。不法なものだが。
「四島一括と言っている限り永遠に戻ってこない」
松山キャスター:今ロシアによるウクライナ侵攻という新しい事態が起きて、日本がロシア制裁に加わっているということで、ロシア側は完全に平和交渉は打ち切りだと言っている。
櫻井よしこ氏(ジャーナリスト):その前に、二島か四島かということで、安倍さんとかなり長い時間話し合ったことがある。そのときに言っていたのは、「安倍晋三回顧録」に書いているように、「四島一括と言っている限り永遠に戻ってこない」と。そして、今、日本が置かれている立場というのは、中国とロシアの両方に向き合わなければならない状況。だから、そういう意味ではやっぱり中国、ロシアというものを念頭に置きながら外交をやらなきゃいけないということで、「プーチン氏もいろいろあるが、自分は積極的に外交を進めている」という説明があった。日本の対応は、紆余曲折を経ていて、一時期は、歯舞、色丹、国後、択捉の四島を固有名詞で書いて、これを交渉の対象にするというところまでいったん行った。ところが、1956年の日ソ共同宣言に戻るとか、日本側の外交路線もはっきりしない。それに、対してロシア側も官僚レベルで、ものすごい反発がある。だから、政治家同士がどんなに頑張ってみても限界はあるのだけれども、政治家が頑張るしかないというところで、安倍さんは二島のほうに傾いたのだと思う。
(ロシアのウクライナ侵攻を受けた日本の対応を受けて)ロシアから見ると、こんな国に北方領土を返す必要はない、というのは当然だと思う。ただ、国と国の交渉は力と力のバランスの問題なので、私は必ずロシアというのは、どういう形かで崩壊していくと思う。非常に力を無くしていくので、その中で必ず北方領土奪還するチャンスはあると思っている。今、ロシアが日本に対してきついことを言っていることに振り回されないで、ちゃんとどのようにしたらいいか、という戦略を考えたらよいと思う。