温暖化と貧困、両方に効く解決策はあるか 経済学から見た地球温暖化問題の最適解

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本書もその呪縛からは決して自由ではないが、経済学者である著者は温暖化論が100%正しいという確信に達することは不可能であることを認めた上で、「100%の確証を得てからこの問題を食い止めようとしても、そのときはもう手遅れである」と呼びかける。

経済成長と気温上昇

気候変動の主な要因は二酸化炭素に代表される温室効果ガスの増加だが、この排出量は経済が成長しなければ増加することはない。世界の平均気温の上昇幅を予測するモデルは多数あり、中位推計では2100年までに産業化以前と比較して3.5℃の上昇が見込まれているが、その背後には世界が21世紀を通じてこれまでと同様の経済成長を遂げ続けるという前提が存在する。その結果、21世紀末には世界全体の一人当たりGDPが13万ドルまで伸びると予測されているが、これは2015年の日本における一人当たり名目GDPの4倍だ。

これに対し、もし今日からまったく経済が成長しなくなり、二酸化炭素排出量も今日の水準がキープされ続けた場合に、同じ21世紀末に予想される平均気温上昇幅は2.5℃にとどまる。しかしその代償は大きく、アフリカ、アジア、中東などにおいて数十億人規模の人々がこれからも病と貧困の中に取り残されることを意味している。

私たちはどちらの道を選ぶべきなのだろうか。高所得国である日本に住んでいる人々の中には、経済成長をするべきでないと考える環境保護至上主義者もいるだろうが、そういった考えは高所得国住人の特権だ。飢餓で明日の食料にも困っている人々に対して「経済成長を諦めろ」という権利は私たちにはない。事実、経済成長まっただ中にいる中国やインドは1997年の京都議定書の枠組みにも参加しなかった。

このような状況に対し、炭素価格の引き上げなどの経済メカニズムを導入することによって、「気候変動の抑制は比較的安いコストで達成することができる」のだという。気候変動抑制の目標は、厳しすぎても(産業化以前からの伸びを1℃に抑える)、緩すぎても(産業化以前と比較して6℃の温暖化を許容する)、前者は経済成長への負担によって、後者は温暖化による被害によって、私たちは莫大なコストを背負うことになる。

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