温暖化と貧困、両方に効く解決策はあるか 経済学から見た地球温暖化問題の最適解
本書によれば経済成長をストップすることなく、将来的な温暖化の被害を最小にとどめられる温度目標は、産業化以前との比較で2.3℃とのことだ。そしてその目標を達成する方法は、二酸化炭素に価格を付けて、費用の最小化を経済メカニズムに委ねることとなる。
方法は大きく分けて2つあり、ひとつは排出権取引(キャップ・アンド・トレード)、もうひとつは炭素税を課すことだが、どちらの手段をとってもその効用は等しい。
いずれの場合でも製造や流通の過程で二酸化炭素を多く消費する商品の価格が高くなり、私たち消費者が自然とそういった商品を敬遠することによって結果的に二酸化炭素の排出量が抑えられる。もちろんその過程で技術革新も促進されるだろう。
経済学的に現実的に対応可能な最適解を
これらと比較すると、政府が低エネルギー製品に補助金を支給するようなやり方は極めて効率が悪い。炭素税か排出権取引いずれかの方法において二酸化炭素を1トン削減するのに必要な費用が12ドルであるのに対し、省エネルギー住宅支援減税を通じた削減費用は255ドル/トンもかかる。似たような政策だと最近ならエコポイントなどが思い浮かぶが、これもやはり極めて効率の悪い方法のようだ。
著者は経済学者であるため、経済的な手法で気候変動を解決しようとするためのポジショントークが含まれている可能性は否定できない。それでも、ヒステリックな「脱成長」論やその反対の懐疑論が横行しがちなこの領域において、気候変動を経済問題として位置づけ、現実的に対応可能な最適解を探すという本書のアプローチは、頭に入れておいて損はないだろう。
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