コンビニ加盟店オーナーは経営者か労働者か ファミマに対して都労委が救済命令

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こんな事例がある。東京都でファミマを営む盛山教也さんは昨年4月、担当の指導員からメールを受け取った。「おでん台の上にフードパックを12個以上展開した写真を本日中に私の携帯に送付してください。もし送付がない場合は、今後の見切り販売伝票をいっさい受け付けません」。

指示通りにしなければ、値引き分を本部は負担しない――こう圧力をかけられても、本部の言いつけを守らないオーナーは、少ないのではないだろうか。

これまでも、コンビニ本部と加盟者の関係は変遷を経てきた。2009年には、公正取引委員会が、セブン-イレブンに対して「加盟者の値引きを制限するのは不当」とする排除措置命令を出した。この騒動をきっかけに、セブンではそれまで全額オーナー負担だった廃棄商品の原価の15%を負担するようになった。

オーナー側の意識改革も必要

激しくシェアを争うコンビニ各社にとって、オーナーの確保は死活問題でもある。「オーナーが見つからなくて出店が滞ったチェーンもある。実際うちにも、セブン以外は『誰か紹介してくれないか』と皆相談してくる」(三橋氏)。これ以上、“コンビニビジネスは過酷”というイメージが根付き、加盟希望者が減るのは厳しい。

酒井さんは「私たちは一番お客さんに近い存在でもある。われわれオーナーの話も聞かないと、本当の意味でのコンビニの持続性はないのではないか」と歩み寄りを求める。

同時に、オーナー希望者の意識改革も必要だ。「加盟する際は対等な立場として契約したつもりでいた」「大手企業だから大丈夫だろうという安心感があった」(酒井さん)。

コンビニのフランチャイズ契約を巡る問題に詳しい中野和子弁護士は「本部に任せていればいいと思ってしまう人が多いが、契約の際にはきちんと自分で情報収集をする必要がある」と話す。たとえばこの立地だったらどれくらいお客が来そうか、事前の売り上げ予測を本部から詳細に開示してもらう、など自分で納得いくまで調べる。決して本部の言うことを鵜呑みにしないのが重要だと強調する。

オーナーと本部の間では、常にさまざまな衝突がある。今回、「対等に話し合える場」ができたことで、両者の関係は大きく変わるだろうか。

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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