災害時の復旧は現場力に任せ、トップは中長期の判断に集中せよ


 また、危機に当たって、トップがどのように対応するかも考えなければならない。すべての情報をトップに集め、トップダウンで指示を出すスタイルは、今回のような広域にわたる複合的な災害、しかも福島原発事故のように短い時間で刻々と変化していく状況の中では、判断の遅れにつながる。「個々の対応策は現場に任せ、トップは中長期的なビジョンの中で今何をすべきかを考え、動くべきだ」と伊藤氏は言う。

目先の復旧ではなく、中長期的な視点から、いかに復興するか。それを考えるのがトップの役割だ。同じ生産拠点で同じものを作る体制に戻していいのか、集中型の生産体制からエリア分散型にするかどうか、生産拠点の立地は現状のままでいいのか。コミュニケーションの方法は……。電力に関しても、当面の夏場の電力制限をどう乗り切るか、ということだけでなく、これまでのような大手電力会社依存でいいのかを考える必要がある。自家発電の導入など分散化は経営戦略の範疇だ。

また、想定外の事象であっても、それを最悪と考えずに、5段階の3くらいと見て、さらに悪い状況に陥るかもしれないことをつねに頭に置いてアクションプランを組み立てる必要がある。たとえば、富士通では大地震の2日後、3月13日の段階で、東南海大地震が発生した場合を想定したシミュレーションを組んだという。人には希望的な状況に戻したいという欲求が働くが、あえてそれを許さない視点が、事態を冷静に判断するための余裕につながる。

さらに、流動的な状況の中でこうした問題点を洗い出していくためには、まず、時系列で事象と行動のプロセスをきちんと記録に残すことが重要で、結果の記録だけでは無意味だ。そして、ハード面、ソフト面、人の能力と行動のプロセスをそれぞれ検証していく必要がある。危機対応チームの中に、冷静な目で記録していくスタッフをあらかじめ決めておくことも大切だ。

十分なツール装備も必要

広い視野でのBCPと同時に、それを実行するソリューションが整っているかどうかも重要だ。震災後3時間後には多くの企業で帰宅命令が出されたものの、首都圏では鉄道の運行停止によってかえって帰宅難民を生み出すことになった。また、月曜には計画停電実施が予告されたにもかかわらず、再度混乱が引き起こされた。こういった非常時の出社が本当に必要だった従業員はいったいどれだけいたのか。

外資系のIT企業では、早いうちに自宅作業を指示し、社員の安全確保を図ったところも多い。

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