高校生が「100年時代の人生戦略」を考えるべき訳 テクノロジーの進化に応じて教育もシフトする

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人生100年という時代背景を学んだ中で、長い目線で今の自分をとらえる、つまり人生100年という観点で今の高校生としての自分を見つめるという、より高い視座を持って自分の人生を形作っていく土台(自分の人生を自らコントロールできる力や学びによって自己を再構築する力・マインドセットなど)を形成することが学校教育でより大事になっていくと思います。

そうした背景の中で、人生100年時代を提唱している『ライフ・シフト』の概念は、学校生活や人生を考えてみて、自己実現、良い人生を形作っていくための基礎を学生時代に築くのにぴったりだと思いました。それが高校生向けの『16歳からのライフ・シフト』の監修のきっかけです。

社会の変化に合わせて教育もシフトすべき

歴史的な円安という理由がありますが、G7の中で、日本だけが唯一GDPを下げています。明らかに日本社会は、構造疲労を起こしていると言えます。1990年代に起こった「情報革命」は、農業革命、産業革命に次ぐ第3期革命期をもたらし、社会が大きく変化しました。

宮田純也(みやた なおや)/一般社団法人未来の先生フォーラム代表理事。早稲田大学高等学院、早稲田大学教育学部教育学科教育学専攻教育学専修卒業、早稲田大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。日本最大級の教育イベント「未来の先生フォーラム」創設や2億7100万円の奨学金設立など、様々な教育に関する企画や新規事業を実施。株式会社未来の学校教育代表取締役などを務める。編著書に『SCHOOL SHIFT』(明治図書出版)。監修に『16歳からのライフ・シフト』(東洋経済新報社)。(撮影:梅谷秀司)

テクノロジーの進歩は情報機器のみならず、医療やインフラなど、多くの領域で変化をもたらしているのです。テクノロジーによって私たちの寿命は延び、人生設計、つまり個人が生まれてから死ぬまでの生き方に影響を与えています。残念ながら日本は、社会制度や個人の意識レベルでもその流れに乗るのが遅れてしまっているのではないでしょうか。

そうした動きの中で、1990年代に起こった情報革命による高度情報社会化が、コロナにより一気に進みました。これによって私たちが過ごす日々の生活も情報通信技術により大きく変貌を遂げています。今までは変わりたい人だけが変わっていたのですが、コロナ禍においては、すべての人が変わらなければいけない、当事者になったのですから。

一方で、今まで日本社会を変えることができなかったのは、学校教育にも問題がありました。前提として、学校教育だけに責任があるということではなく、企業や行政、私たちなどにも当然責任があり、学校教育だけに責任があると主張したいわけではない点にご留意ください。

私たちが経験した学校教育とは「近代学校教育」と呼ばれ、明治時代に作られたものです。「近代学校教育」は、産業革命に対応した社会に有為な人材の輩出が一つの社会的な役割とされました。社会が変わってしまったのに、今日の学校教育は前時代的な制度と仕組みになってしまっています。今こそ、情報革命によって生み出されている新しい社会に対応した学校教育が必要だと考えています。

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