三菱電機「社長再任に賛成」急回復への期待と課題 総会での賛成率は「クビ寸前」58%から94%に

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漆間社長は、まずは上層部から順番に行動を変える必要があるとして、「コーチング」を説明。「部下から課題を持ちかけられた際、指示するだけでなく一緒に解決するようになることで、部下も課題を提起しやすくなる」とした。

漆間社長が話していることは至極当然のことだ。ただ、問題点について声を上げれば「社内での調査、顧客への説明で仕事が増える」「声を上げても助けてくれない」など、三菱電機には「言ったもん負け文化」がはびこっていた。それを変えるには地道な一歩を積み重ねるしかない。

三菱電機取締役の賛成率

「現場に足を運んで従業員とどれくらい対話しているのか」。そのように問う声も、株主から上がった。

不正の発覚で杉山武史前社長が2021年7月に引責辞任。白羽の矢が立ったのが、当時は取締役で専務執行役だった漆間社長だった。社長就任から間もない2021年9月以降、国内44拠点を巡回。今年3月にその2周目が終了した。

その後も現場巡りを続けており、訪問回数にすると延べ100回程度に上る。社員が「会社を変えよう」として壁にぶつかる際には、漆間社長が相談に乗ったり、一緒に改革案を検討したりすることもあるという。

従業員からの信頼は回復途上

ただ、具体的な行動を起こしてはいるものの、従業員による会社への信頼感はまだ回復していない。

三菱電機では、エンゲージメントサーベイという従業員への調査を行っている。三菱電機で働くことに誇りややりがいを感じている従業員の比率は、2022年11月~12月に行われた最新の調査で54%。

品質問題発覚前の2021年5~6月に行われた調査での61%という結果と比べると、7ポイント減少した状態でとどまっている。そこで2025年度には、グローバル製造業の平均値である70%を目指す。

品質検査不正を受けて2022年度までは、問題の洗い出しと改善に向けた組織体制の構築を進める段階だった。急回復した漆間社長の賛成率には、取り組みが一定程度進展しているという評価に加え、今後に向けた期待が多分に込められている。来年の総会までの1年、その実効性が問われる。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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