サウジアラビアが石油市場で大きな力を持つ事情 中国の中東における存在感がさらに高まる可能性

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サウジアラビア東部ダーランの石油施設=サウジアラムコ提供(写真: AFP=時事)
欧米対中ロの分断構造が深刻化するなか、相対する国からの脅威を取り除くために、安定したエネルギー供給を自陣営から確保しようとする動きが加速している。
とくに主要な資源エネルギーである石油の供給が不安定になることは各国にとって大きな痛手だ。「シェール革命」により石油生産が爆発的に増加したアメリカを中心に、中東の盟主サウジアラビア、さらには台頭する中国の思惑について、『地政学で読み解く! 戦略物資の未来地図』の著者であり、日本エネルギー経済研究所 専務理事・首席研究員の小山堅氏に聞いた。

「シェール革命」でアメリカの石油生産は世界トップに

石油は現在、世界で最も多く使われているエネルギー資源です。その需給状況が世界経済、国際政治に大きな影響を与えており、各国が最も大きく依存している化石燃料です。実際、石油は消費量でも国際的な取引量でも、資源エネルギーのなかで群を抜いた存在です。

1970年代に発生した2度にわたる石油危機によって、1973年には49%と半分近くを占めていたエネルギー源としてのシェアは徐々に下がってきてはいますが、それでも2021年の段階で世界のエネルギー消費で最大となる31%を石油が占めています。

(出所)『地政学で読み解く! 戦略物資の未来地図』

そのなかでアメリカは1日当たり1659万バレル(2021年)石油生産しており、これは世界トップです。

以下、2位がサウジアラビア、3位ロシア、4位カナダ、5位イラクと続いています。もともとアメリカの石油の生産量は世界最大だったのですが、ソ連(当時)やサウジアラビアに抜かれ、20世紀の終わり頃には生産量の低下が続いていました。再びトップに返り咲いたのは実は最近のことです。

きっかけは、地中奥深くにある頁岩のなかに閉じ込められた石油やガスを最新技術で掘り出す「シェール革命」でした。「シェール革命」により、石油の生産量が爆発的に増加。2005年には1日当たり690万バレルだった生産量が、2021年には同1659万バレルまで増大し、それまで石油を輸入に依存していたアメリカは一転してほぼ自給して輸出もできる国にもなったのです。

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