「女性にも徴兵制を」韓国で何度も議論沸騰のワケ 男女間のジェンダー対立、それでも平等意識は高まる

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現在、韓国・国防省は女性徴兵制導入や軍服務期間の拡大、代替服務(軍以外の公共機関などに服務すること)廃止などを検討していない。女性徴兵制はまだ非現実的だというのが大方の見方であり世論でもある。

ジェンダー対立は「女性徴兵制」にも

すでに「男性のみに兵役義務を課する兵役法3条1項が性差別だ」という憲法訴訟がこれまで2010、2011、2014年の3回提起されている。しかし、いずれも兵役法の条項はすべて合憲との判決が出ている。女性も徴兵制に導入されるべきかどうかという点には社会的な合意もなく、また、関連した研究も十分に行われていない。

当時、憲法裁判所は「国防の義務は、兵役法によって軍務に従事するなどの直接的な兵力形成義務のみを指すのではない。意識面での兵力形成および、兵力形成後に軍の作戦命令に服従して協力する義務も含まれている」と述べた。

また「男性は(女性より)戦闘により適合した身体的能力を持っており、身体的能力が優れる女性も生理的な特性や妊娠・出産などで、訓練や戦闘関連業務に支障が出ることもある。最適な戦闘力確保のために、男性だけを兵役義務者と定めたことを恣意的と見ることは難しい」と付け加えた。

2023年4月、与党「国民の力」議員の申元植(シン・ウォンシク)氏と、兵務庁、星友会(韓国の予備役将校の団体)が共同開催した「人口絶壁時代(少子高齢化社会)の兵役制度発展フォーラム」でも似たような問題が議論された。

ここでは、女性徴兵制を検討すべきだと、その必要性が議論されたが、兵務庁は「軍隊服務期間の延長、女性徴兵制の必要性、代替服務廃止などと関連する多様な意見が提起されたが、政府の公式の立場はなく、検討されたことがない」と明らかにしている。

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