「ファイナルファンタジー」が直面する大問題 世界的RPGはかつての輝きを取り戻せるか

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『FF15』はグラフィックスのレベルの高さから全体としては高い評価を獲得したものの、その『FF15』で試みたようにオールドファンと新たなオーディエンスの両方を満足させようとすると、どっちつかずとなり、凡庸な作品に終わってしまうリスクがある。

これまでのFF作品は子どもも含めて誰もが気軽にプレイできる雰囲気だったのに対し、『FF16』のトーンはかなりダークなものになっている。ゲームはクライヴの王国が侵略され、家族が惨殺されるところから始まる。吉田は、現代の厳しい世相を反映させるために、こうした方向性をとったと話した。

「悪を見せることで善を際立たせ、よりリアルに感じられるようにできる」と吉田。「だが、『FF16』の中心にあるのは、愛についての物語だ。それは希望についての物語でもある」。

操作キャラが1人になった理由

吉田によると、『FF16』で1人のキャラクターにフォーカスする決断に至った大きな理由は、今風のバトル設計としたことにある。クライヴを操作するプレイヤーは、敵を攻撃したり敵の攻撃を回避したりするのに、自身のタイミングと反射神経に頼らなくてはならない。操作キャラの数を増やすと、プレイヤーは多数のスキル群を学ばなければならなくなるため、ゲームが複雑になりすぎていただろうと吉田は話した。

1人のキャラクターに焦点を当てて進行するストーリーは、「英雄の旅」と呼ばれる構造をとることが多い。神話学者のジョーゼフ・キャンベルが提唱した概念で、誰かが未知の世界に飛び出していき、危機を切り抜け、変容を遂げて帰還するというものだ。この構造により、ルーク・スカイウォーカーやハリー・ポッターのほか、ゲームでは『ゼルダの伝説』のリンクや『トゥームレイダー』のララ・クロフトといったヒーローたちが生み出されてきた。

次ページ「英雄の旅」の構造はゲームデザイナーの自由を奪う
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