「社会にいいこと」で「稼ぐ力」を上げるESG投資 当たり前の手段で資本主義をアップデートする

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なお少々細かい点だが、ESG投資に「インパクト」を加えて呼ぶのは、投資対象企業のリスク低減要素が強いESG投資に加えて、投資対象企業のプロダクト・サービスが社会課題解決に与える影響(インパクト、詳しくは後述)を投資評価・判断に組み込む時である。

ESG/インパクト投資を行う投資家は、「社会的にいいインパクトをもたらす」という命題と投資リターンの関係を、一方を重視すれば一方が損なわれる「トレードオフ」として捉えるのではなく、相乗効果を狙っている。

未公開株投資の一般的観点で企業価値を上げるために行うのは、

(1)売り上げを増やす

(2)コストを削る

(3)株価を上げる

というある意味当たり前のPE的アクションであり、ESG/インパクト投資もその枠組みから外れるものではない。

ESGを軽視すれば不買運動で損失も

この時、カギを握るのが、消費者としても働き手としても最も重要視される「ジェネレーションZ(GenZ)」である。おおむね 1990年代半ばから2000 年代終盤、または2010年代序盤までに生まれた世代で、生まれながらにしてデジタルネイティブである初の世代とされる。ESGやSDGsといった課題に上の世代とは比べ物にならない関心を持つ。

将来の現役時代が長いこの世代の消費行動、仕事観も含めたライフスタイルは、ESG/インパクト投資の大きな追い風となる。

ESG/インパクト投資の3つの観点のうち、(1)の売り上げアップの面では、例えば筆者が関わるVCのGLIN Impact Capital(GLIN)が投資する「坂ノ途中」という会社は、環境負荷の小さい農業を実践する農家から仕入れた農作物をその個性や背景を伝えながら販売することで、ジェネレーションZやその上のミレニアル世代を中心に新たな需要を生み出し、売り上げを伸ばしている。

農作物の大量生産、大量消費、大量廃棄を前提にした流通が主流である中、顧客は季節や環境のさまざまな影響を受けて変化する野菜の「多様性」を受け入れ、それを楽しみながら、持続可能な農業と暮らしという未来を考えられる。

逆に、顧客による不買運動により多大な損失を被ることもある。

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