本格始動する「トヨタ新設計方式」の行方 競争力強化の効果は未知数

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中西氏が指摘するように、設計・開発手法の改革に向けて多くの自動車メーカーがトヨタより先に走り出している。その筆頭は、トヨタを追って1000万台の販売規模に達した独フォルクスワーゲン(VW)グループだ。

VWは「MQB」と呼ぶ戦略で、部品の7割を共通化して開発費を2割抑制、量産効果でコスト削減をめざしているが、その効果をまだ十分には発揮しきれていない。一時は新方式が工場にうまく浸透せず、生産が遅れて残業も増える事態が発生した。

MQBを採用したモデルも登場しているが、ロシア、ブラジルなどでの需要減退や技術投資も響き、主力のVWブランド乗用車部門は14年の営業利益が前年比14%減に落ち込んだ。同部門は利益率6%以上という目標を掲げる。しかし、13年の2.9%から14年は2.5%に低下している。

トヨタの利益率はすでにVWの倍近い。デンソーなど連携が不可欠なサプライヤーとはトヨタグループとして連携するなどVWとは相違点もあるが、先行するVWの現状を踏まえ「トヨタのTNGAに対する不安もゼロではない」と、ある自動車アナリストは懸念を示す。

トヨタ車のイメージ一新にはまだ時間

「トヨタがこれまで作ってきた没個性の車ではもう世界で戦っていけない」。マツダ<7261.T>の元エンジニアで、モジュラー設計コンサルティングを行うモノづくり経営研究所イマジンの日野三十四所長はTNGAによるデザインや商品力の強化に期待する。

車は一般的に5年程度で全面改良する。TNGAはこの全面改良のタイミングで各車に採用するため、効果が本格的に出るまでにはしばらく時間がかかる。トヨタは仕込み段階が続く一方、VWはMQB採用車を順次投入し、シェア首位の世界最大市場の中国などで生産能力も増強、「投資の成果を回収する時期に入ってくる」(中西氏)。

日野氏の予想では、13年にMQB採用車第1弾を出したVWでも導入が進んで「本当に経営の成績として出てくるのは5年後」。トヨタのTNGAも他社と比べて大きな違いはないとして、トヨタも含めた各社のこうした取り組みはまだ「手探り状態」が続くとみている。

 

 

(白木真紀  取材協力:金昌蘭)

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