スター・ウォーズの緻密すぎるファン育成術 マニアの愛を原動力に変えるビジネス戦略
2012年にジョージ・ルーカスの跡を継いで社長に就任したケネディは、2013年にドイツで開催された前回のセレブレーションに出席した後、最新作『フォースの覚醒』のキャラクター・デザイン部門に複数のファンを採用した。
「文字どおり、開いた口がふさがらないくらい驚いた」と、ケネディはファン自作のR2-D2の展示会について語っている。素人のドロイド制作者を迎えたことは、ファンに自分たちが評価されていると感じさせるだけでなく、作品に「本物らしさが加わった」。
筋金入りのオタクを納得させる
ルーカスフィルムは、ファンを観察して対応する戦略もずば抜けている。フランクリンたち十数人のスタッフは、ファンからのメールに返信し、TwitterやFacebookに「一日中ずっと」投稿していると、マーティンは言う。
「筋金入りのオタクのことはよく知っている。そういう人たちには、すぐに応えるようにしている」。
彼は一部のファンに個人的な連絡先を教えているという。
最近は、ファンからの手紙も大半がデジタルだ。昔ながらに郵便で返事をする場合、多くの映画会社はひな型の文面になりがちで、一部は即ゴミ箱行きだろう。しかし、ルーカスフィルムは違う。
コリン・ギルパトリックという7歳の自閉症の少年は、ジェダイの騎士が結婚を禁止されていると知って不安になった。彼の夢はジェダイの騎士になることなのだ。そこで、この戒律を変えるべきだと思い、母ペギーの助けを借りてルーカスフィルムに手紙を書いた。
「本当に驚きました。返事が来たのです」と、ペギーは言う。郵便で届いた手紙には、ジェダイの騎士からの返事として、結婚が認められる場合もあると書かれていた。
「息子にささやなか魔法をかけてくれたおかげで、私たち家族は(スター・ウォーズに)永遠の忠誠を誓います」。コリンは学校で女の子に次々とプロポーズをして、心配した教師から家に連絡が来たという。
「スター・ウォーズ」のためだけに力を注ぐ
ほかの映画会社にとって、ルーカスフィルムのやり方をまねることは不可能な部分もあるだろう。「インディ・ジョーンズ」シリーズが休眠状態の今、ルーカスフィルムは「スター・ウォーズ」のことだけ考えていればいい。また、ルーカスは家族経営のように会社を営んできたため、ファンの対応に力を入れたいと思えば、資金をつぎ込むことができた。しかし、ほとんどの映画会社ではそうはいかない。