世界トップ5入り「福島原発事故ドラマ」の賛否 Netflix「THE DAYS」事実に基づく再現性の限界

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「事実に基づく物語」を強調し、実際の現場を想像させるような臨場感が見どころに(画像:Netflix)

毎話にわたり「事実に基づく物語」を表示し、これこそ作品の価値にあることは理解できます。当然のように作品の原点も東日本大震災にあります。

ドラマ「THE DAYS」の企画を立ち上げ、脚本を執筆し、プロデュースした増本淳氏が「2011年4月終わりに石巻市へ行き、ボランティア活動をした時の体験が非常に大きかった」とプロダクションノートで語っているように、現場から作品が生まれていることがわかります。

増本氏は「コード・ブルー-ドクターヘリ緊急救命-」などを代表作に持つ、元フジテレビのプロデューサーです。福島原発事故を独自に調べていく中、最終的に『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』を執筆した門田隆将氏の著書を原案に、「事故調査報告書」や「吉田調書」をエピソードの柱にしながら、仕上げていったというわけです。

作品の最大の価値とは

また増本氏は膨大な資料の中からエピソードを取捨選択していく作業は「非常に悩む部分だった」と明かしています。同時に複合的に絡み合う事実をわかりやすい社会派エンターテインメント作品として落とし込むことを目指し、その結果、日本崩壊の危機を現場がいかに救ったのかを読み取れるドラマにはなっています。劇中で総理大臣役の小日向が言い放つ「日本が北海道と西日本に分断されてしまう」という台詞は印象に残ります。

これだけリサーチと再現を売りにしているのだから、いっそのこと解説の役割を担うドキュメンタリーを掛け合わせた「ドキュドラマ」として見せることもできたのではないかと思ってしまいます。製作には日本法人のワーナー・ブラザースも加わっており、Netflixが独占で世界配信している枠組みですから、作品形態についてありとあらゆる可能性を探ることができたはずです。

そう思うのは、世界配信される原発事故を扱うドラマとして勝負する場合、アメリカHBOの傑作「チェルノブイリ」と比較されるのが大前提にあることが大きいです。政府の欺瞞をテーマにした「チェルノブイリ」は作品としての奥深さがあり、フィクションから現実を見せていることに成功しています。これに対してドラマ「THE DAYS」は最後の最後で「自然の前に、人間は無力だ」という言葉にテーマを集約させていますが、事実の再現にとどまった印象を持たせています。

数字上はしっかりと好成績を収めています。世界配信された6月1日の初週集計(5月29日~6月4日)の時点でNetflix公式の非英語TVジャンルのグローバルTOP10ランキング5位に位置づけ、さらに翌週集計(6月5日~11日)でも5位をキープし、TOP10入りした国数は59カ国に伸びています。関心が高いことは明らかです。

今も廃炉作業と復興への道のりが続いていることに目が向けられれば、これが作品の最大の価値となるのかもしれません。

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長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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