ほか重要キャラクターも名の知れた役者ばかり。
複数の責任者の立場にあった人物をモデルにしたという中央制御室の当直長に竹野内豊、原子炉建屋内に突入した決死隊のベテラン原発運転員を小林薫が演じ、また吉田所長の右腕役に音尾琢真、東電副社長役に光石研が起用されています。
そして首相官邸で苛立ちをぶちまける台詞が続く内閣総理大臣役に小日向文世という顔ぶれです。
『リング』ホラー監督が手掛けた場面
どうやら重厚なドラマになっていそうと、ドラマ「THE DAYS」に関心を引く条件は十分に揃っているようにみえます。では、いったいなぜ作品として物足りなさがあるのかというと、1つ目は人物像のわかりにくさにあります。これだけ演技派の役者たちを揃えているのにもかかわらず、登場人物ひとりひとりの背景が描ききれていないことで、人物像が画一的に見えがちです。
吉田所長(役所)に関しては、原子炉への海水注入を戦略的に決断する時のような見せ場があり、随所で職業ドラマ的な痛快さがあるものの、それぞれが役割に徹した理由が見えずじまいなのです。
ドラマ「THE DAYS」は人間ドラマよりも、実際の現場を想像させるような臨場感に集中させているのは確かです。成功させてもいます。なかでも放射線の見えない恐怖の表現に力を入れていることが伝わってきます。
ホラー映画『リング』シリーズを手掛けた中田秀夫を監督チームに迎え入れ、中田監督は建屋の暗闇の中で決死隊が作業する第4話と第5話を担当しています。不快音の効果もあって、凄まじい緊張感を与えてきます。中田監督の腕が光る場面です。
ただそれも、構成上に問題があるように感じてしまいます。全8話の多くが作業シーンに費やされていることもあり、緊張感でさえ単調な印象を持たせているのが惜しいのです。できる限り、実際に現場で起こっていたことを知ってもらいたいという製作側の気持ちは尊重したいですが、ひとつのドラマ作品として見た場合、いくつもの再現エピソードが連なっただけの集合体のように見えてもしまいます。
再現にこだわり過ぎたことが評価の分かれ目になっているのは事実です。アメリカの作品批評サイト「Rotten Tomatoes」をはじめ、海外では特にプロの批評家から一般ユーザーにまで手厳しい指摘を受けています。
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