「7月にはようやく入れてくれましたが本当に汚かったので掃除をしていたら、私がコロナにかかってしまいました」
高熱が続き、仕事はおろか身の回りのこともできなくなった愛さん。そのまま和人さんの家で過ごすことにした。体調的には最悪だったようだが、2人の関係性はコロナをきっかけに深まった。
「武田さんにも伝染ってしまいました。でも、彼は自分も熱があるのに私を看病してくれたんです」
自分も熱があってつらいのに看病してくれた
「いやー、大変でしたよ。愛はとにかく機嫌が悪かった。おじやを作ってあげたら『いらない』、放っておいたら『お腹がすいているんだから何か作ってよ!』と言うのです」
愛さんの傍らでシャンパンを飲んでいた和人さんが口をはさみ始めた。調子が出てきたようだ。大企業の関連会社で正社員として長く勤めている和人さん。定年を迎える年齢まで結婚しなかったのはなぜだろうか。
「ずっと好きな人がいたからですよ。一回り年下の同僚で、彼女は今でも独身です。告白したこと? ありません」
この恋愛については多くを語ろうとしない和人さん。年下の同僚だからセクハラにならないように配慮したのだろうか。意外なほど真面目な人物である。業務に関しても朝6時ごろに出社して、あやふやなことは基礎から勉強して資料を読んでから取り組むという日々を過ごしてきた。
「やるべきことはきちんとやらないとアカンと思っています。60歳で定年退職をしましたが、延長雇用の今も業務内容は変わっていません。給料は半額になっても、他で働くよりは良い金額だと思います。頭が働く限りは働きますよ。僕が先に逝くので、愛にこの家と1億円ぐらいは遺そうと思っています」
「よく言うよ~。そんなに持っていないくせに!」
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