しかし、私たちは完成したことによる利便性に目を奪われ、その後の維持や補修に巨額の費用がかかることに気づかないまま過ごしてきた。いや、気づかないふりをしていたのかもしれない。
2005年の道路公団民営化時には、建設費の償還を50年で終え、その後に無料化するとしていたが、その当時は「老朽化対策については見通せていなかった」と高速道路会社のトップも認めている。
その後、2012年に中央道・笹子トンネルで天井板崩落により9人もの犠牲者を出した事故もあって、2014年に道路整備特別措置法を改正して有料期間を2065年まで延長した。しかし、その後も新たな技術などによって次々と劣化が見つかり、ついに今回の期間の延伸へと至ったのだ。
とはいえ、2115年といえば、今年生まれた赤ちゃんが92歳になる遠い未来である。つまり、いま生きている人のほとんどすべての人の目の黒いうちに、高速道路の無料化は実現しないことになる。
「いつかは無料に」という幻想に近い原則
これまで日本では、一般道も含め「道路は無料」という原則が貫かれており、有料道路も「建設費の償還が終われば無料開放される」という確固としたフレームがあった。
この道路行政の基本原則はそう簡単には崩すことができないため、今回も「いつかは無料に」という幻想に近い原則を変えることができず、期限を延ばすことで“原則”は守られたわけだが、多くの人が感じているように、もうそのまやかしは許されないところまできている。
たしかに、高速道路は物流の要であり、実際に高速道路を利用しない人も間接的に便益を享受している。自宅に居ながらにして宅配便が全国から迅速に届くのも、近所のスーパーマーケットに新鮮な食材が並ぶのも、高速道路の役割があってこそ。安いに越したことはないし、無料ならば多くの人が喜ぶだろう。
とはいえ、高速道路の置かれた状況は、都市部、特に首都圏や関西圏とそれ以外の地方では、まったく様相を異にしている。
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