甲状腺がん裁判、「東電主張の被曝評価は過小だ」 原告弁護団長が語る、勝訴確信の科学的根拠
――東電は、原発事故による原告らの甲状腺への被曝線量は少ないと考えられるとしたうえで、原発事故と原告らの甲状腺がんと間に因果関係はないと主張しています。
東電は「専門家による知見」であるとして、「甲状腺等価線量100ミリシーベルト以下である場合、甲状腺がんを含む発がんリスクが増加することは確認されていない」などと主張している。
これに対して私たちは、チェルノブイリ原発事故後の研究調査を基にしたミコラ・トロンコ・ウクライナ医学アカデミー内分泌代謝研究所所長による研究結果に着目した。甲状腺等価線量50ミリシーベルトどころか、10ミリシーベルト以下の子どもからも多くの甲状腺がんの発症が確認されているとする、同氏の論文を証拠として提出している。
国際放射線防護委員会(ICRP)は、低線量でも被曝線量に応じてがんや白血病のリスクがあると仮定するのが「科学的にもっともらしい」と表明し、この考え方を「直線閾(しきい)値なしモデル」と呼んでいる。東電が依拠する100ミリシーベルト以下であれば発がんリスクが増大することはないという考え方に「科学的妥当性はない」と私たちは考えている。
勝訴への決定打となる「黒川意見書」
――実際に原告が受けた被曝線量はどの程度だったのでしょうか。
原告の被曝線量の実態についてはこれから詳しく主張していくが、東電が主張する「10ミリシーベルト以下」などという低い数字はありえない。
東電は「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR)の2020年/2021年報告書などをよりどころにして、被曝量を推定している。だが、UNSCEAR報告書では深刻な過小評価がなされている。
このことについて原告側では、黒川眞一・高エネルギー加速器研究機構名誉教授による意見書3通を裁判所に提出し、UNSCEAR報告書における評価の仕方に、いかに過小評価があったかについて主張している。この黒川意見書は裁判の帰趨を決めるほどのインパクトを持つと考えている。
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