新興国の成長は本物か? 米系情報ベンダー幹部に聞く
金融危機を境に、世界経済の軸は先進国から新興国へと激変した。国際通貨基金の最新の世界経済見通しでも、2011年の成長率は先進国の2.4%に対し、中国、インドなど新興国が6.5%と予想されている。企業も新興国の開拓戦略でしのぎを削る。
一方で、政治体制の違いなどから新興国経済の「実力」に不透明感が払拭しきれないのも確か。彼らの果たして成長は本物か? 新興国の経済データに強い米系データベースベンダー、シー・イー・アイ・シー データ(CEIC)のアロイシオ・パレンテ氏(アジア統括代表)に聞いた。
--どのような層が新興国の経済データを必要としているのでしょうか
CEICは世界の141カ国の主にマクロ経済データを提供しており、顧客は幅広い領域にわたります。ヘビーユーザーといえるのは、全体の6~7割を占める銀行、証券などの金融機関。次に多いのは一般企業。製造業やサービス業などが新興国で急速に事業規模を拡大しており、新興国の成長と市場需要を予測して事業計画を作るためにわれわれのデータを活用しています。また、数は少ないですが、各国の中央銀行も重要な顧客です。特に日本を含むアジアでは9割の中央銀行が顧客となっています。大学などアカデミック分野の顧客も重視しています。
こういった幅広いニーズを背景に、CEICのビジネスは過去5年間で400%成長しました。われわれは上場企業(ユーロマネー・インスティテューショナル・インベスター社)の傘下にありますので、売上高などは具体的に言えませんが、非常に力強く成長していることは間違いありません。
--先進国から見て、一部の新興国については政治経済体制の違いから不透明さを感じることも少なくありません
確かに、いくつかの国はデータ開示の面でも透明性や内容の信頼性に欠けていることがあります。自国経済について、実際よりも成長しているようなデータを出す国、逆に過小なデータを出す国もあります。残念ながら、こういった元データそのものを変えることはできません。
しかし、データの信頼性という問題に対しては、われわれは2つのソリューションを持っています。ひとつは、エリアごとに配置している現地スタッフが、データの定義などに関する顧客の疑問にできる限り回答しています。社内に答えがない場合は、データソースに直接問い合わせます。
もうひとつは、ベンチマークとなるさまざまなデータをクロスマークして、総合的に経済成長を把握することです。たとえば、電力消費量や自動車・二輪車の販売台数の推移などを参照すれば、その国の経済成長力はある程度分かるでしょう。