スカイマーク「組合軽視」が招いた一触即発の事態 パイロットの争議行為で通常運航にあわや支障
2つ目は、事前アルコール検査に応じないというものだ。
スカイマークは、2019年5月に乗務前アルコール検査でパイロットからアルコールが検出され、交代したという事案が発生した。この件で、国交省から業務改善勧告を受け、再発防止策として、通常のアルコール検査前に独自で事前アルコール検査を行っている。
「運航スケジュールの変更」はスカイマークの通常運航に支障をきたし、「事前アルコール検査拒否」は同社が国交省に提出した再発防止策に違反するということになる。争議行為が実施されれば、同社が受ける影響は小さくない。
一方で会社側は、争議権の確立という強硬手段をとってくるとは思っていなかったようだ。これを機に会社側の対応は一気に軟化する。5月18日に事務所の使用など要求をほぼ全て認める「満額回答」を組合側に提示する。この回答をもって、ひとまず争議行為は回避された模様だ。
今後は賃金改定や賞与の交渉に突入
最悪の事態を避けた会社側だが、一連の対応には大きな問題がある。「ひとたび争議となれば、すぐに交渉に応じる」という姿勢を示してしまったことだ。
通常は、組合対応に長けた労務畑の幹部が交渉に当たるが、スカイマークは2010年に組合が解散して以降、組合がなかった。また人事担当の西岡氏はファンド出身、洞社長もANAの副社長を務めたが、国土交通省のキャリアが長い。航空会社での労使交渉の経験は豊富とは言えない。
航空会社で最も重要なことは安全運航である。乗員組合が結成されてからわずか2カ月で、このような一触即発の事態に至ってしまったことは経営上の大きなリスクと言えるだろう。
今回は事務所の提供などの要求にとどまったが、今後、賃金改定や賞与といった難しい交渉が始まることが予想される。スカイマーク労使交渉の山場はまだまだこれからだ。
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