ホンダ、5回目「F1復帰」で内外に渦巻く期待と不安 低収益にあえぐ4輪事業、課題は開発費の捻出

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前言撤回の第1の理由はF1のレギュレーション変更だ。

2026年からは温暖化ガスを排出しない100%カーボンニュートラル燃料の使用が義務づけられることに加えて、最高出力の50%をエンジン、50%を電動モーターでまかなうことが規定となる。現在は最高出力における電動モーターの比率は20%弱だ。

「電動化の時代に電動のパワーユニットでわれわれが頂点に立つということを示す絶好の機会だと捉えている」。三部敏宏社長はあらためてのF1参戦の意義についてそう強調する。

ホンダは2040年までに世界で売る新車をすべてEV(電気自動車)か燃料電池車(FCV)にする目標を掲げる。特に世界で急速に普及が進むEVへ注力する姿勢を鮮明にしている。

EVでは航続距離や出力を大きく左右するのが電池やモーターといった電動部品の領域で、自動車メーカー各社は開発にしのぎを削っている。ホンダはF1で導入されるレギュレーションが、こうした電動ユニットそのものやバッテリーマネジメントシステム(BMS)といったEVの中核技術を高めることに役立つと考えているわけだ。

最重要市場の北米で高まるF1人気

加えて、北米でのF1人気の拡大も背中を押した。

2021年までは北米のレースはアメリカ(テキサス)、カナダ、メキシコの3戦のみだったが、若者を中心とした人気の高まりを受けて2022年にマイアミ、2023年にラスベガスのレースが追加された。F1全23戦のうち5戦が北米開催となっている。

北米はホンダにとって世界販売台数の3割を占める最重要市場だ。ただ、販売台数はコロナ禍前の2019年3月期の195万台から、直近の2023年3月期には119万台へと約4割も減少した。コロナ禍や半導体不足の影響があるとはいえ、さすがに看過できない。F1を通じて技術力の高さをアピールすることでブランド強化につなげる狙いもある。

ホンダがエンジンなどの技術支援を行っているレッドブルは2022年のチャンピオンチーム(写真:ホンダ)

北米市場を席巻した初代「シビック」や国内でミニバン市場を開拓した「オデッセイ」などこれまで多くの人気商品を生み出してきたホンダだが、近年はヒット車の不足にあえぐ。

あるホンダ系部品メーカーの幹部は「以前のような独創性で存在感を示してきたブランドイメージが復活できれば、参戦への大きな意味がある」と期待をかける。

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