その欠点とは、フルタイム派遣に比べて、シフトの組み合わせなどでマッチングに手間がかかるという点だ。手間がかかるからといって派遣先から受け取る金額を引き上げることができるわけでもない。そのため、なかなか普及しなかった。
ところが、フルタイム派遣の人材が思い通りには集まらないことから、状況は変わってきた。
ある派遣会社の営業担当はこう話す。「多くの企業は週3日勤務という人材を使ったことがないので、なかなか発想が至らない。でも、繁忙期の業務量を詳細に確認してそこに0.7人分という感覚で時短スタッフの配置を提案すると、『なるほど、この手があったのか』と納得する企業は多い。日々、営業活動というよりも啓蒙活動をしています」。
パートタイム派遣にしなければもはや人材の採用ができない状況にあるが経理分野。企業による経理業務のアウトソーシング化が進み、派遣経理の需要は増える一途。経験者の採用は困難を極めているという。経理事務の派遣時給は2014年12月時点で1558円と前年から2.7%も上がっているほどだ。
経理人材に特化したある派遣会社の担当者はこう話す。「企業からの要望は当然のようにフルタイムで残業可能な人材だが、もはやそれではまったく人が集まらない。パートタイム2人への置き換えを提案し、あえて主婦層を狙って『週3日・1日5~6時間勤務』で募集するようにしている」。
フルタイム派遣の募集コストが高騰
業界にとってのかつての"欠点"も、もはやそうではなくなってきた。エン・ジャパン派遣会社支援事業部の深井幹雄氏は「フルタイム派遣の募集コストはかつての3倍以上にも上がっており、結果的にパートタイム派遣のほうが高い粗利を得られるようになってきた」と説明する。
同社が運営する派遣求人サイト「エン派遣のお仕事情報」に掲載されている週3日勤務の案件は、1年前と比べて61%増えており、1日5時間以内の案件も46%増えている。「求職者に都合のいい案件を作れる会社でなければもう生き残っていけない」(深井氏)。
主婦を呼び込む場合、「週3日、10~16時勤務」に加えて、自宅から乗り換えなしで40分以内で通えること、大きな負荷なくこなせる業務内容であることも必須条件だという。人気は圧倒的に事務職だ。また、家庭や学校の行事などで休みを調整できることや、昼食や休憩のためのスペースがあること、化粧室がきれいといった定性的な条件も重要になってくる。
エン・ジャパンは3月に、短時間勤務や週3~4日勤務などの仕事を集めた求人サイト「女の求人マート」を開設。派遣による事務職や販売職など家事や育児と両立しやすい求人が常時10万件掲載されている。家事の合間などに求人検索ができるようスマホからの閲覧に最適化されており、ボタン一つで「現在地から近いシゴト」を検索する機能もついている。
派遣社員は、かつてプロとして働く女性の生き方がドラマに描かれた時代から、主婦の再就職先としてよりフィットした働き方に変わりつつある。人手不足を背景に、あの手この手で主婦を労働市場に呼び込もうとする動きが活発化している。
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