広島サミットの現場で聞いた海外記者の辛口評価 主役はゼレンスキー氏で核軍縮は完全にスルー
今回の表の主役がゼレンスキー氏だとすれば、影の主役は、その影響力増大から昨今注目を集める「グローバルサウス」(南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称)と中国だろう。実際、記者にサミットの注目点を聞くと、返ってきた答えの多くがこの2つのテーマに集中した。
会場で顔なじみであるイギリスの「エコノミスト」誌の東京特派員にばったり会った。彼には、今回のサミットにおけるグローバルサウスへの関与は不十分に映ったようだ。「インドやインドネシアは今回広島に来て何かを得ただろうか?」と話し、気候変動対策やグローバルヘルスといった分野でもっと新興国に実利を与えるべきだったと話していた。
バングラデシュメディアのベテラン東京特派員は、G7が示した「グローバルサウスへの関与強化」という姿勢に批判的な見方をしていた。
西側諸国が新興国を引きつけようとする試みは「絶対にうまくいかない」と断言。「西側諸国はこれらの国々をかつて植民地化し、殺戮を繰り返してきたのに、どうして突然人道主義的になりうるだろうか」と疑問視していた。そして「西側諸国は我々を分断しようとしている」と切り捨てた。
一方で政治・経済担当のインド人記者は今回のサミットの意義を強調していた。G7はインドにとって重要なプラットフォームで、モディ首相自身グローバルサウスという言葉を好んで使い、「貧しい国と豊かな国の橋渡しをしようとしている」と解説してくれた。
中国には対話に向けたサインも
中国について前出の「エコノミスト」特派員は、「首脳声明を丁寧に読み込むと、日米欧で中国とどう向き合うかという点で微妙な『隙間』『距離感』が見られる」と論評した。そのうえで「中国に対して厳しい一方で、対話に向けた手も差し出しているね。もちろん、中国がその手をとるとは限らないわけだけど」と話してくれた。
上海に駐在するスペインの若手記者は、「(戦争をしている)ロシアと中国の状況は違うんだから、同じように扱うべきではない。中国とはもっと直接話をしていくべき」との持論を展開した。
ちなみに期間中にG7によって採択された、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」については実質的な中身が乏しいとみなされたようだ。筆者が話したなかで今回の成果として核軍縮について論評する記者は一人もいなかった。
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