日本共産党が中国共産党と和解するのはなぜか 岸田文雄政権の防衛費拡大への危機感が後押し

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両党の事情に詳しい関係筋によると、日本共産党は2023年2月から提言内容について関係筋とすり合わせ作業を開始したようだ。3項目の①は、胡錦涛前総書記が2008年に来日した際、福田康夫・元首相とサインした「戦略的互恵関係」に関するコミュニケでうたわれた。

安倍晋三元首相も2018年10月の訪中で、習近平国家主席に対し①競争から協調へ、②互いに脅威とはならない、③自由で公正な貿易体制を発展の「新三原則」を提起し、習も①と②について同意した経緯がある。

一方、岸田政権は2022年12月に閣議決定した安保関連3文書で、中国を軍事的に抑止する敵基地攻撃能力(反撃能力)保有と、5年間で防衛予算を国内総生産(GDP)比2%に倍増させる大軍拡路線を決めた。

党関係改善へ「4項目合理」盛る

中国側はこれを、中国敵視に基づく包囲網政策として強く反発、共産党は両国の関係改善のためには「互いに脅威とならない」は必須と考えた。

尖閣問題について日本共産党は「日本固有の領土」とみなし、日本政府とほぼ同様の立場をとり、中国と対立する最大要因だ。提言②の「4項目合意」とは、2014年11月両国政府が北京で合意した「日中関係の改善に向けた話合い」に関する文書を指す。

その第3項は「双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有している」とし「対話と協議」を通じて「不測の事態を回避」で合意したのである。

この第3項について中国側は「新たな棚上げ」と解釈するが、日本側は「尖閣など東シナ海海域と書いたのであり、領有権に関する合意ではない」と、異なる解釈をする典型的な「玉虫色合意」だった。

4項目合意について日本共産党はこれまで、「安倍が首脳のシャトル外交を再開するために出した『通行手形』のようなもので意味はない」(関係筋)と極めて冷淡な反応を示してきたから、この合意を入れたのは対中姿勢の変化と言える。

このため提言に入れたのは「中国に向けた関係改善のサイン」と考えていい。①と③は日中両政府に向けたもので、岸田の肯定的回答はそれを裏付ける。

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